研究実績の概要 |
近年のCu(In,Ga)Se2(CIGS)太陽電池の研究進度は加速を増しており、太陽電池の光電変換効率には目覚ましい向上が見られる。最近(H28年7月)、ドイツの研究機関によってアルカリ金属元素の一つであるルビジウム(Rb)添加する手法により変換効率の世界記録(22.6%, セル面積0.41 cm2:Table IV. Notable Exceptions, Prog. Photovolt. 25, 3, 2017)が更新された。そのため、当初計画では三元系CuGaSe2(CGS)薄膜のアルカリ効果(特にこれまで一般的に知られていたNa効果)の検証を行う予定であったが、世界の研究進捗状況を鑑み、最先端課題である四元系Cu(In,Ga)Se2薄膜におけるRb効果の検証を優先的に行った。研究実績として、Rbを添加したCIGS薄膜を光吸収層に用いた太陽電池デバイスを作製し、1 cm2サイズの世界最高効率21.0%(セル面積1.0 cm2: Table I. Confirmed single-junction terrestrial cell and submodule efficiencies, Prog. Phtovolt. 25, 3, 2017)に迫る効率20.9%を達成した。また、得られたRb添加CIGS薄膜試料のTEM-EDX、TEM-EELS測定により、CIGS薄膜に添加されたRbなどのアルカリ金属は主にCIGSの結晶粒界に存在することが確認できた。さらに、RbとKの効果は極めて類似性が高く、反対にCIGS薄膜表面に与える影響などはNaの効果とは異なることなどがわかった。さらに、多結晶CIGS薄膜粒界を制御すべくSi添加によるCIGS薄膜の構造制御を行ったところ、Si添加によってCIGS薄膜中のNaやKなどアルカリ金属の拡散量を制御できることを見出した。
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