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2016 年度 実施状況報告書

化合物薄膜太陽電池におけるアルカリ効果の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K04969
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

石塚 尚吾  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 太陽光発電研究センター, 主任研究員 (60415643)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード太陽電池 / カルコゲナイド / 薄膜 / Cu(In,Ga)Se2 / アルカリ金属
研究実績の概要

近年のCu(In,Ga)Se2(CIGS)太陽電池の研究進度は加速を増しており、太陽電池の光電変換効率には目覚ましい向上が見られる。最近(H28年7月)、ドイツの研究機関によってアルカリ金属元素の一つであるルビジウム(Rb)添加する手法により変換効率の世界記録(22.6%, セル面積0.41 cm2:Table IV. Notable Exceptions, Prog. Photovolt. 25, 3, 2017)が更新された。そのため、当初計画では三元系CuGaSe2(CGS)薄膜のアルカリ効果(特にこれまで一般的に知られていたNa効果)の検証を行う予定であったが、世界の研究進捗状況を鑑み、最先端課題である四元系Cu(In,Ga)Se2薄膜におけるRb効果の検証を優先的に行った。研究実績として、Rbを添加したCIGS薄膜を光吸収層に用いた太陽電池デバイスを作製し、1 cm2サイズの世界最高効率21.0%(セル面積1.0 cm2: Table I. Confirmed single-junction terrestrial cell and submodule efficiencies, Prog. Phtovolt. 25, 3, 2017)に迫る効率20.9%を達成した。また、得られたRb添加CIGS薄膜試料のTEM-EDX、TEM-EELS測定により、CIGS薄膜に添加されたRbなどのアルカリ金属は主にCIGSの結晶粒界に存在することが確認できた。さらに、RbとKの効果は極めて類似性が高く、反対にCIGS薄膜表面に与える影響などはNaの効果とは異なることなどがわかった。さらに、多結晶CIGS薄膜粒界を制御すべくSi添加によるCIGS薄膜の構造制御を行ったところ、Si添加によってCIGS薄膜中のNaやKなどアルカリ金属の拡散量を制御できることを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

Rbを添加したCIGS薄膜を光吸収層に用いた太陽電池デバイスを作製し、1 cm2サイズの小面積セルで効率20.9%を達成している。現時点における世界最高効率21.0%に比肩する極めて高性能なCIGS太陽電池デバイスが作製できた。また得られたRb添加CIGS薄膜試料のTEM-EDX、TEM-EELS測定により、CIGS薄膜に添加されたRbなどのアルカリ金属は主にCIGSの結晶粒界に存在することが確認できた。さらに、RbとKの効果は極めて類似性が高く、CIGS薄膜表面に凹凸を与えラフネスを増加させるなどNa添加効果では見られない現象も確認できた。さらに、多結晶CIGS薄膜粒界を制御すべくSi添加によるCIGS薄膜の構造制御を行ったところ、Si添加によってCIGS薄膜中のNaやKなどアルカリ金属の拡散量を制御できることを見出した。Si添加CIGS薄膜を光吸収層に用いたバッファフリー(従来のCIGS太陽電池のデバイス構成に用いられているCdSやZnS(O,OH)、高抵抗ZnO層などを一切省き、裏面金属電極/CIGS光吸収層/透明導電膜層構造から成る)太陽電池デバイスで15%を越える高い変換効率を達成することにも成功している(石塚尚吾 特願2017-035420「太陽電池及びその製造方法」)。

今後の研究の推進方策

今後は、当初の予定通りワイドギャップカルコゲナイド材料である三元CGSへのRb添加などアルカリ効果検証のための試料作製と評価を予定しているほか、引き続き四元CIGS薄膜においてもアルカリ金属添加量を変化させた試料を用いてより詳細な分析を進める。現在までに得られているCIGS薄膜のRb効果の検証に関するデータは世界でも最新・最先端の内容であり、学術的体系化に向けて論文や国際会議における発表など、今年度以降戦略的に外部公開を行っていく予定である。太陽電池デバイスの高性能化だけでなく、広く恒久的な学術的知見獲得を目指した基礎研究を引き続き実施する。

次年度使用額が生じた理由

研究経費において、実際の配賦額が希望額からの減額があったため当初購入を予定していた設備備品(低抵抗用抵抗率計)の購入が叶わず、スペックダウンした廉価版を購入することになった。これにより若干の余剰額が発生したが、一方で研究遂行に必要な試料分析の外注分析費が当初予定よりかさむことになり、余剰分の設備備品費をこれに充てることになった。結果、余剰額はなくなり、また次年度以降の研究遂行に必要な外注分析に充てるため次年度使用額が生じることとなった。

次年度使用額の使用計画

主に研究遂行に必要な外注分析費用に充てる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [学会発表] CIGS太陽電池の表面・界面に残された課題2016

    • 著者名/発表者名
      石塚尚吾
    • 学会等名
      平成28年度応用物理学会「多元系化合物・太陽電池研究会」年末講演会
    • 発表場所
      磐梯熱海ホテル華の湯
    • 年月日
      2016-12-10
    • 招待講演
  • [産業財産権] 太陽電池及びその製造方法2017

    • 発明者名
      石塚尚吾
    • 権利者名
      石塚尚吾
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2017-035420
    • 出願年月日
      2017-02-27

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公開日: 2018-12-17  

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