高速位相シフトを導入したインコヒーレント自己相関ディジタルホログラフィ(IDH)による実時間高精細イメージング技術を開発した.IDH光学系として,液晶空間光変調器(SLM)を用いるインライン方式(SLMDH)と凹面ミラーを用いる干渉計方式(ISDH)を構築した.SLMDHでは液晶のアナログ的性質により連続かつ非線形な位相変化が得られることを見出した.この条件では一定位相シフトは行えないため,任意の位相シフト量に対応する一般化位相シフト法(GPS)を導入した.これにより位相シフトの精密制御が不要になり高速計測が可能になる.ISDHでは微動ステージの高速移動で位相シフトを実現した.カメラと非同期で動作させることにより高速化を実現した.実験により不要成分がない明瞭な物体光再生に成功した.分解能は1μm以下であることを確認した.連続位相シフト方式により高負荷状態の携帯端末の変形計測ができることを示した. GPSとしてフレネル回折場における位相分布の統計的性質を用いる統計手法を用いた.干渉成分の強度が直流成分の約1/100になる条件においても位相ランダム性は成立しIDHでも統計手法が使えることを明らかにした.さらにベクトル化されたホログラムを用いる正規化法を考案した.位相ランダム条件が成立するときノルム近似条件が成立することを明らかにし正規化法による物体光復元の理論式を導出した.また物体光復元に位相シフト量の推定が不要であることを明らかにした.新しい直流成分推定法を開発し正規化法と組み合わせることにより明瞭な物体光が得られることを示した. IDHシステムを用いてナノオーダー物体の計測を行った.約1μmのマイクロパウダーと約500nmのリポソームの計測を行い明瞭な形状情報を得ることができた.高速カメラと高倍率対物レンズを用いることによりさらに高速化高分解能化が可能である.
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