研究課題/領域番号 |
16K04971
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
宮本 克彦 千葉大学, 大学院融合科学研究科, 准教授 (20375158)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | テラヘルツ / 熱レンズ / 屈折率 / 有機非線形光学結晶 |
研究実績の概要 |
本研究は、テラヘルツ光発生用有機非線形光学結晶のレーザー損傷メカニズムを解明するため、熱レンズ時間分解計測法の開発を目的としている。DAST(4’-dimethylamino-N- methyl-4-stilbazolium tosylate)結晶をはじめとする様々な有機非線形光学結晶が開発されている。しかし、有機非線形光学結晶は一般に無機結晶に比べてレーザー耐性が低く、損傷閾値も励起レーザーの仕様(波長、パルス幅、繰り返し周波数)に大きく依存している。現在では、破壊検査が一般的であるレーザー照射耐性評価では、光損傷というイベントを計測しているのに過ぎず、結晶欠陥・結晶歪や結晶中の熱過程を計測しているわけではない。破壊要因を特定し結晶品質を正確に評価するには、レーザー耐性を非破壊に定量評価することが望まれる。そこで、本研究では、テラヘルツ発生時に誘起される結晶中の局所的な屈折率変化を捉え、有機非線形光学結晶における損傷過程の解明を目指している。 本年度(平成28年度)は、テラヘルツ光発生時の有機非線形光学結晶内の温度勾配を、熱レンズ計測することに注力した。熱レンズ効果とは、レーザー光を照射した際に媒質に局所的な熱勾配が生じることで、媒質内の屈折率分布が変化する現象である。高繰返し1.5um帯2波長ピコ秒レーザーをポンプ光とした差周波テラヘルツ光発生光源をベースとし、プローブ光にHe-Neレーザーを用いて有機非線形光学結晶のレーザー照射耐性評価を行った。屈折率変化測定の対象としては、DASTを用いた。その結果、有機非線形結晶内での局所的な屈折率変化の測定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本手法の特徴は、テラヘルツ光発生を行いながら結晶の屈折率変化を測定できる点である。本年度は、高繰返し1.5um帯2波長ピコ秒レーザーをポンプ光とした差周波テラヘルツ光発生を行い、ビーム形成を行ったプローブ光(He-Neレーザー)をポンプ光と同軸に入射する熱レンズ計測のための光学系構築を図った。リレー光学系を介してプローブ光の焦点距離変化を自動計測するシステムを確立したことで、有機非線形光学結晶内での局所的な屈折率変化を高精度に測定可能であった。ポンプ光パワーに応じた熱レンズ効果を捉えることが出来たことから、現在までの進捗はおおむね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに、テラヘルツ光発生時のDAST結晶内における温度勾配を反映した熱レンズ計測が可能であった。今後は、屈折率変化とレーザー耐性との相関を測定する事を目的に、他のテラヘルツ光発生に実績のある種々の有機非線形光学結晶(OH1、BNA、DSTMS,HQM-TMS等)を用いて測定を行う予定である。さらに、本テラヘルツ光源の特徴である波長可変性を活かし広帯域な吸収係数の算出が可能であることから、屈折率の線形応答および非線形応答についても考慮する予定である。また、偏光依存性についても計測を行い、結晶方位に関する光損傷の情報についても今後引き出せる可能性がある。
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