研究課題/領域番号 |
16K04972
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
庄司 暁 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (20437370)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光放射圧 / 光クロマトグラフィ / カーボンナノチューブ / サイズ効果 |
研究実績の概要 |
本研究は、マイクロ流路と光導波路を組み合わせ、ナノ材料の光駆動・分離の原理の確認と光クロマトグラフィ技術の基礎実験を行う。具体的には、以下に示す5つを大きな課題として研究を行う。(1)ガラスの加熱延伸加工によるマイクロ流路光導波路構造の作製(2)チューブ型光導波路へのレーザー光の導波と光放射圧の確認(3)導波光によって励起されたエバネッセント場による導波路内部の粒子の駆動(4)光放射圧の強さと波長依存性の評価(5)波長選択的粒子抽出システムの構築。 平成28年度は、ガラス管の加熱延伸によってマイクロ流路光導波路の作製技術を確立した。細胞のマイクロインジェクションの実験で用いられるマイクロピペットプラーを用いて、内径約20μmのシリカガラス製チューブを作製した。テストサンプルとして、ポリスチレン微小球を分散した水溶液をマイクロチューブに導入した。ガラス管先端を水溶液表面に接触すると、毛細管現象によって瞬時に長さ約5mmにわたって水溶液がガラスチューブに導入された。ガラスチューブに導入された微小球を顕微鏡観察し、レーザー光を導入する前の微小球の流れを観察した。チューブの末端からの水の蒸発と液/気界面のエネルギー勾配によって、微小球がチューブの末端に流れていく様子が確認された。この流速は本研究で提案する系では元来備わった現象であり、光圧を印加して微粒子を分離・抽出するメカニズムにこの流速を積極的に応用する可能性も考えている。また、末端をオイルで封じることで、この流速を止めることもできる。この状況で、チューブの端面からレーザー光を照射し、微小球が光圧によって駆動することも実験的に確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況はおおむね順調である。当初予定していた課題のうち、ガラスチューブの加熱延伸加工によるマイクロ流路光導波路の作製を実施し、微粒子分散水溶液のチューブ内への導入、レーザー光照射による微粒子の駆動の基礎実験を行った。また、理論面からは、単層カーボンナノチューブに単色レーザー光を照射した際の光の放射圧の理論解析、長さ依存性、偏光依存性、その他の解析について、大阪府立大学・石原一教授と共同で研究に着手している。単層カーボンナノチューブの水溶液への均一分散、カーボンナノチューブの顕微ラマン分光システムの構築も行った。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は、光の圧力によるカーボンナノチューブの捕捉、駆動、さらにカイラリティ選別の実験にとりかかる。28年度に構築したシステムを用い、ガラスキャピラリー(流路)の内部を光圧で選択的に駆動する。対象とするナノ材料には、Rice大学・河野淳一郎教授との共同研究で作製のHiPco単層カーボンナノチューブの他、通常の暗視野顕微鏡で一本ずつの観察が十分可能な多層カーボンナノチューブの使用も、基礎実験の段階で取り入れる。特に、多層カーボンナノチューブでの実験では、光圧を受けたカーボンナノチューブが水中を駆動する際、レーザー光の伝搬方向に対してどの方向に配向した状態で駆動するのかを、系の側方から直接顕微観察によって明らかにしたい。また、カーボンナノチューブ以外にも、プラズモニック金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子、ナノダイヤモンドなどの各種ナノ材料も入手し、開発の系に適用を試みたい。
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