研究課題/領域番号 |
16K04976
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
居波 渉 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (30542815)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超解像顕微鏡 / 差分検出 |
研究実績の概要 |
昨年度に構築した微分位相コントラスト超解像顕微鏡を改良した。本顕微鏡では、試料からの光を集める対物レンズの瞳面を4チャンネルマルチアノード光電子増倍管の検出器面に結像する必要がある。ここにレンズをフォーカスを合わせる機構を導入し、確実に対物レンズの瞳面を検出器面に結像できるように改良した。また、この瞳面を検出器面の中心に合わせる機構も導入した。これにより、コントラストと位相差検出感度が向上した。 次に、本顕微鏡の結像特性を解析するため、計算プログラムを開発し、計算結果と実験結果を比較した。計算は、FDTD (Finite Difference Time Domain )法を用いた。照明光は点光源として、その点光源の位置を走査し、微分位相コントラスト顕微鏡像を計算した。試料は水中(屈折率 1.34)のシリカ粒子(屈折率 1.4)とした。試料を透過した光の強度を2つの検出面で取得し、差分をとった。その結果、粒子のエッジ部分で差分信号が強くなった。また、微分の符号は、左右のエッジで逆転した。そして、粒子のない位置で2つの検出面の光強度の差を取ると、輝度値はゼロになった。これは、実際に構築した微分位相コントラスト超解像顕微鏡を用いて取得した画像と一致している。数値計算により、通常の明視野顕微鏡像と比べて微分位相コントラスト顕微鏡像はコントラストが高いことを確かめた。また、粒子とその周囲の屈折率の差が減少したときの、微分位相コントラスト顕微鏡像のコンラストの低下は、通常の明視野顕微鏡像に比べ、少ないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に構築した微分位相コントラスト超解像顕微鏡の検出光学系を改良し、コントラストと位相差検出感度が向上した。さらに、対物レンズの瞳面と分割検出器の中心を合わせる機構を導入した。これにより、球状の試料を観察した際、球の中心部分で輝度が正から負に変わるようになった。このように、装置の改善が順調に進んでいる。 また、数値計算を行い、実験と計算により得られた像の輝度分布が一致した。この計算により、微分位相コントラスト超解像顕微鏡の特性が明らかになりつつある。微分位相コントラスト像の方が、通常の明視野像に比べて高いコントラストが得れることも確かめられた。これは、微分位相コントラスト像では、試料がない場所で輝度がゼロになるからである。試料がないと照明光がはまっすぐ進むため、分割検出器のそれぞれの検出面での差がない。
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今後の研究の推進方策 |
微分位相コントラスト電子線励起超解像顕微鏡の応用展開として細胞観察を行う。試料には、試験や研究で幅広く用いられているHeLa細胞を用いる。生物細胞の屈折率は1.37程度である。生物細胞の観察は、培養液中(屈折率1.33程度)で行われる。このように観察試料である細胞とその周囲の屈折率差は0.04程度しかない。この屈折率差を実際に高いコントラストで取得できるかを検証する。また、明視野像と比較し、空間分解能やコントラストを評価し、その特徴を明らかにする。特に、この微分位相コントラスト超解像顕微鏡による細胞観察において、これまでの明視野像では試料とその周囲の屈折率差が小さく観察できなかったものが、微分位相コントラスト像では観察できるようになっているかについて検証する。また、エンドサイトーシスや細胞膜の構造やそのダイナミクスを微分位相コントラスト超解像顕微鏡で動画観察を行う。
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