昨年度に改良した微分位相コントラスト超解像顕微鏡の評価を行った。収束電子線を照射によるナノサイズの光スポットの生成のための蛍光薄膜には酸化亜鉛を用いた。酸化亜鉛の成膜にはイオンプレーティング法を用いた。その膜厚は50nmである。そして、アニーリング処理を行うことで、高輝度な酸化亜鉛蛍光薄膜を得た。空間分解能とコントラストを評価のために、直径200nmシリカ粒子を観察した。粒子のエッジ部で差分信号が強くなり、反対側のエッジでは、差分信号の符号が逆転した。差分検出と単一検出との像のコントラストを比較すると、差分検出の方が1.4倍程度コントラストが高くなった。また、数値シミュレーションにおいても同様の結果が得られた。このように光の回折限界程度のサイズの粒子の観察においても、差分検出による微分位相コントラスト法により、高いコントラストが得られることがわかった。 次に、無染色細胞の観察を行った。液中観察は細胞と液体との屈折率差が小さい。差分検出を用いることで像のコントラストが改善し、より微細な変化を可視化することが可能となる。蛍光膜である酸化亜鉛は細胞に対して毒性を持つ。そのため、細胞を培養する側の反対側に酸化亜鉛を製膜したSiN基板を用いた。HeLa細胞はPBS溶液中に設置した。PBSの屈折率は1.33~1.36である。また、細胞の屈折率は1.36~1.40であるため屈折率差は0.1以下となる。差分検出と単一検出により取得した観察像を比較すると、差分検出画像の方が高コントラストであった。単一検出では検出できない細胞構造を差分検出では可視化することができた。
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