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2016 年度 実施状況報告書

z偏光による電子スピン操作

研究課題

研究課題/領域番号 16K04977
研究機関静岡大学

研究代表者

伊藤 哲  静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (70425099)

研究期間 (年度) 2016-10-21 – 2019-03-31
キーワードz偏光 / スピン偏極 / スピン間相互作用 / 量子井戸
研究実績の概要

本年度は光の進行方向(z方向)に電場の振動成分を持つz偏光の形成のための実験系の構築を行った.また,ポンプ&プローブ法による時間分解測定における励起偏光を変えることにより,電子,正孔スピン緩和の評価を行い,z偏光を用いた場合の基礎データの収集を行った.さらに,ポンプ&プローブ法により結合量子井戸(CQW)の評価も行い,z偏光と組み合わせてスピン操作するために必要な知見を得た.
偏光・時間分解ポンプ&プローブ測定では,円偏光,直線偏光におけるスピン偏極とその緩和時間の測定を行った.井戸幅4, 8, 12 nmのGaAs/AlGaAs多重量子井戸を測定に用いた.円偏光励起(ポンプ)と直線偏光励起で異なる緩和時間が観測された.直線偏光ポンプでは,井戸幅の増加(量子閉じ込めエネルギーの減少)とともにスピン緩和時間は減少したのに対して,円偏光ポンプでは増加した. 直線偏光ポンプでは軽い正孔(LH)と重い正孔(HH)状態の混合効果がスピン緩和に対して支配的であるが,円偏光ポンプでは別の効果(Dyakonov-Perel’機構)が支配的であることを示唆する結果を得た.このように,円偏光と直線偏光により形成されるスピン状態には大きな違いがあり,形成されたスピンが受ける緩和機構も異なることが実験的に明らかになった.z偏光を用いる場合も影響を受ける緩和機構が異なることが予想される.
また,井戸幅の異なる(10 nmと15 nm)二つの量子井戸が11 nmの障壁層で弱く結合したCQWにおけるスピン緩和の評価も行った.10 nmの量子井戸に励起された電子スピンは波動関数の染み出しにより15 nmの量子井戸へと流れ込み,閉じ込めの強い正孔スピンだけが10 nmに取り残されると考えられる.これにより,電子と正孔の交換相互作用が減少し,正孔スピンの緩和時間が大きく変化する事を示唆する結果を得た.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初は初年度は空間位相変調器を用いたz偏光の形成に取り組む予定であったが,採択が半年遅れ,予算も申請よりも減額されたため,購入物品の再検討,研究実施計画の見直しを行った.
初めに既に構築済みのポンプ&プローブ測定系の改良と励起偏光によるスピン緩和機構の変化の整理から着手した.これは2年度目以降に取り組む予定であったが,前倒しで行った.具体的なz偏光の形成は2年度目以降に行う予定である.
以上から,半期の採択遅れと,実施順番が前後しているため当初の予定とは異なるが,2年半の全研究期間で考えればおおむね順調に進展していると考えられる.

今後の研究の推進方策

当初は空間位相変調器(SLM)を本研究課題の予算で購入を予定していたが減額のため購入ができなくなった.予算はSLMの購入の代わりにz偏光の評価系,ポンプ&プローブ測定系の改良に必要な光学部品類,計測器類の購入に当てる.
2年度目には別予算で準備するSLMでz偏光の形成を行い,その評価を進める予定である.同時にポンプ&プローブ測定系への組み込みを行い,z偏光によるスピン操作の実証を目指す.

次年度使用額が生じた理由

当初は初年度予算の大半を用いて空間位相変調器(SLM)の購入を予定していたが,減額のため光学部品類や計測器類の購入に切り替えた.また,採択時期が半期遅かったため,当初3年間の計画を2年半に見直す必要が生じたため,年度ごとの予算配分の再検討が生じた.これらの理由から,初年度は予算額の執行が予定より少なくなった.

次年度使用額の使用計画

SLMは別予算で購入することとし,代わりにz偏光の評価とポンプ&プローブ測定系の改良に必要な光学部品類と計測器の購入に使用する予定である.また,結合量子井戸試料の作製費用にも当てる予定である.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [学会発表] Control of electron- and hole-spin state by polarized photon2016

    • 著者名/発表者名
      Tetsu Ito
    • 学会等名
      The 18th Takayanagi Kenjiro Memorial Symposium
    • 発表場所
      静岡大学(静岡県浜松市)
    • 年月日
      2016-11-16
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2018-01-16  

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