研究課題/領域番号 |
16K04978
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
武田 実 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (90510686)
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研究分担者 |
松井 真二 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 特任教授 (00312306) [辞退]
岡田 真 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 助教 (60637065) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 表面プラズモン / マイクロレンズ / ナノインプリント |
研究実績の概要 |
本研究においては、金属ナノ構造に励起される表面プラズモンを用い、新規光学素子として数ミクロンサイズと超小型でシンプルな構造ながら、ファーフィールド領域においてサブ波長サイズの集光ビームを生成可能な、紫外域用プラズモニック・マイクロレンズの実現を目指している。またその実用化検討を、ナノインプリント技術を適用して推進し、ナノスケールの光加工(記録)、バイオケミカル分析など広範な応用分野開拓に展開することを本研究の目的としている。 平成29年度は前年度に引き続き、紫外域用プラズモニック材料として Al薄膜を用いたプラズモニックレンズの構造設計、作製評価、及び特性向上の検討を進めた。構造設計、作製評価については、Al薄膜(約150nm膜厚)に同心円状スリットを配置する方式で、各スリットの幅、半径位置を主要パラメータとして、電磁場解析ミュレーション結果と近接場光学顕微鏡の測定結果を比較検討し最適化を進めた。その結果、当初の目標にかなり近い、レンズ直径約5μm、焦点距離4μm以上でサブ波長サイズの集光スポットサイズ(半値幅300nm)が設計上、及び計算上では達成された。しかし実際にスパッタ方式Al成膜、リングスリットのFIB微細加工等で形成したプラズモニックレンズ単体の集光特性の測定においては、焦点距離は4μm以上となったものの、集光スポットサイズでは未だサブ波長に達していない。プラズモニックレンズの作製プロセス条件の改善を今後進める。またナノインプリント技術を適用した作製プロセス検討については、UV光ナノインプリントとAl薄膜リフトオフを組合せたプロセスにより、レジストパターンまでは安定して作製可能になり、リフトオフによるAl薄膜へのパターン転写も実現しつつある。しかし形状の制御性、再現性など作製プロセス条件の相当な改善が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Al薄膜を用いた紫外域用プラズモニックレンズの構造設計、FIB微細加工による単体レンズの作製プロセスの検討を前年度に引き続いて進め、また本光学デバイスの実用化を目指したナノインプリント技術の適用検討を行った。 プラズモニックレンズの構造設計については、Al薄膜(約150nm膜厚)に同心円状スリットを配置する構造で、波長375nmのレーザーを集光した場合の光強度分布を電磁場シミュレーション解析で検証し、レンズ直径(最外周リングスリット径)5μmで焦点距離4μm以上まで拡大し、集光スポット径はサブ波長の300nmに維持出来ること確認した。実際のレンズ作製においては、従来の真空蒸着方式に比べ、短時間で成膜可能なスパッタ方式を導入検討してAlを成膜し、Al薄膜のFIB加工により単体レンズを作製、近接場光学顕微鏡を用いた測定によりレンズの集光特性を評価した。その結果最長の焦点距離として4.1μmが得られたが、集光スポット径は約500nmでサブ波長のスポットサイズは未だ達成出来ていない。Al成膜、FIB加工プロセスなどの今後の改善が必要である。 ナノインプリント技術の適用検討については、前年度に作製プロセスとして選定した、UV光ナノインプリントとAl薄膜リフトオフを組合わせた方式で、プロセス改良を進めた。UVナノインプリントについては、ナノインプリント後のレジストパターンの残膜処理などの改善により、安定してレジストパターンが形成出来るようになった。その後のAl薄膜リフトオフについては、Al成膜後のレジストのベーキング条件、及びアセトン超音波溶液処理の条件などを適切に設定することにより、プラズモニックレンズのAl膜パターンの形成を確認した。ただし約10000個のレンズを集積したレンズアレイにおいて、パターンが正常に出来ているのは未だ一部分であり、その再現性もあまり高くない。
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今後の研究の推進方策 |
Al薄膜プラズモニックレンズ単体の構造設計については、当初の研究計画の目標である、直径約5μm、焦点距離5μm、サブ波長集光スポット径(~300nm)にかなり近い特性を達成出来たが、実際の作製評価において、近接場光学顕微鏡で測定された集光スポット径は500nm程度となり、未だサブ波長のスポットサイズは実現出来ていない。スパッタ方式によるAl成膜、及びFIB加工プロセスの更なる改善を進める予定である。 ナノインプリント技術の適用検討については、UVナノインプリントとAl膜リフトオフを組合せたプロセスにより、約10000個のレンズアレイのレジストパターンは安定して作製出来るようになったが、Al膜リフトオフプロセスによるAl膜パターンの転写形成は未だレンズアレイの一部でしか正常に出来ておらず、今後プロセス条件の改善を進める。しかしナノインプリント技術を担当する研究分担者が退職等により担当から外れたため、今後はナノインプリント技術分野で、新たに本研究に協力して頂ける研究機関、或いは関連材料を供給可能なメーカー等を探索する必要があり、現在検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
関連する国際学会が今回も国内で開催され、また研究分担者との打合せを電子メール等による情報交換で済ますことが出来たため、当初の予定に比べ旅費を節約出来た。昨年度に研究分担者が退職したため、所属機関からの予算返納があり、また共同研究している微細加工プロセス検討用の材料費も減額された。 今後の使用計画については、研究に必要な物品費、学会等の旅費に充当する。
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