研究課題/領域番号 |
16K04982
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
徳田 安紀 岡山県立大学, 情報工学部, 教授 (80393502)
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研究分担者 |
坂口 浩一郎 岡山県立大学, 情報工学部, 助教 (10551822)
高野 恵介 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 助教 (70583102)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メタマテリアル / スリットアレイ / テラヘルツ / 透過スペクトル / 誘電体多層膜 / 有効屈折率 |
研究実績の概要 |
メタルスリットアレイは,スリット端での回折限界周波数以下では,異常に高い屈折率をもったガラスのような性質を示すことが分かっている.本研究では,このメタルスリットアレイを多段に積み重ねた様々な構造の光学的性質を調べ,新たな現象を見出し,その物理メカニズムを解明するとともにTHz波の制御に利用することを目的としている. まず,実験のためのメタルスリットアレイの試作ならびに透過特性の測定について検討した.加工方法としては放電加工を選択し,外注業者と相談しながら基本構造の設計行い,真鍮とステンレスを用いて試料を作製した.並行して,THz透過スペクトルの測定環境を整備し,2種類の金属試料の特性比較を行った.測定結果より電気伝導度がより高い真鍮の方がより理想的な特性を示すことが分かった.ただし,放電加工ではスリット幅の変化できる幅は限られ,細かく変化させることは難しことが分かり,現状では同じ試料内でスリット幅を変調させた構造の実験検討は困難であることが判明した. 次に,メタルスリットアレイの積層構造が自然界には存在しないような大きな屈折率をもつ誘電体多層膜と同等の性質を示すことを実証するため,試料作製および透過スペクトルの測定を行った.時間領域有限差分法を用いたシミュレーションから,予想通り回折限界周波数以下で実験結果は疑似的な誘電体多層膜の性質を示していることを確認した.また,その有効屈折率は,材料パラメータではなく,構造パラメータのスリットの幅と周期の比で大きく変えられることも実証した. さらに,空気層を間に挟んだ2段構造の共鳴モードの振る舞いについて実験と理論から詳しく調べ,基本的には誘電体3層膜とみなせるが,回折限界近傍での特性は多重交差現象により非常に奇妙な振る舞いをすること,回折限界の半分の周波数以上で一部のモードがブルーシフトをするなどこの系特有の新たな知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.時間領域有限差分法を用いた基本構造に対するシミュレーションから,多重交差による共鳴現象など,この系に特有な新たな物理現象を見出した. 2.実験環境整備については,試料作製と透過特性の測定が順調に進み,次年度(H29年度)までの目標がほぼ達成された.これにより,次々年度(H30年度)に予定していた積層型人工誘電体造などの実験検討の一部が実施できた. 3.ただし,放電加工を用いた試料作製ではスリット幅は細かく変化できないため次年度(H29年度)に予定していたスリット変調効果の実験検討は現状では困難であることが分かったが,代わりに試作可能な新たな構造の検討を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度(H29年度)は,メタルスリットアレイでいろいろな誘電体を挟んだ構造を中心に実験と理論検討を並行して進める予定である. なお,研究分担者の大阪大学の高野助教が信州大学に転籍(H29/6/1付)する予定であるが,引き続きメタマテリアル関係の研究を継続するため,本研究の研究分担者は継続する.また,大阪大学での実験が支障なく行えるように,大阪大学レーザー科学研究所の加藤康作氏に新たに研究分担者として参画してもらう予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験試料の作製が順調に行え,他の研究費で処理できたため
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次年度使用額の使用計画 |
論文投稿および掲載(できればオープンアクセス紙)の費用に使用する
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