研究課題/領域番号 |
16K04997
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
作道 章一 琉球大学, 医学部, 准教授 (10397672)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プリオン / プラズマ / 酸化ストレス / ラジカル / スカベンジャー / プラズマトーチ / 大気圧 |
研究実績の概要 |
プリオン病原体を研究対象とし、酸化ストレス損傷の観点から大気圧プラズマトーチによる不活化機構の解析を行った。さらには、プリオン感染細胞と非感染細胞の酸化ストレス抵抗性の違いを利用した、感染細胞の選択的除去による治療応用へと展開するための基礎研究を行った。 昨年までに大気圧プラズマトーチによる処理でプリオンが分解できるとともに試験管内増殖能も低下させることができることを明らかにしている。さらに、酸化ストレス物質が大気圧プラズマトーチから発生しているか確認するため、大気圧プラズマトーチ稼働時に発生している酸化ストレス物質を電子スピン共鳴(ESR, Electron Spin Resonance)を用い、スピントラップ剤を組み合わせてラジカル種同定を行った。その結果、HラジカルやOHラジカルの発生が確認された。このことから、大気圧プラズマトーチから酸化ストレス物質が産生していることが分かった。そこで平成30年度は、プリオン感染細胞に対する効果を調べるため、プリオン持続感染神経細胞ScN2aとプリオン非感染神経細胞N2aをシャーレ上で培養した状態でプラズマ照射を行った。その結果、ScN2a細胞の方がN2a細胞よりも高いプラズマ感受性を示した。ScN2aはN2aよりも酸化ストレスに弱いことが知られているため、プラズマに対する感受性の違いも酸化ストレス感受性で説明できるものと考えられた。さらに、酸化ストレス物質を消去するラジカルスカベンジャーを培地中に添加してプラズマ処理すると細胞死が抑制されたため、これも酸化ストレスの関与を示しているものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までの研究で、大気圧プラズマトーチによるプリオンの分解効果や試験管内増殖能の低下が確認できただけでなく、プリオン持続感染神経細胞ScN2aとプリオン非感染神経細胞N2aに対して感受性の違いがあることも確認できた。さらには、ラジカルスカベンジャーを用いた実験で酸化ストレス物質の関与も証明できた。これらのことから、当初の予想よりも大幅に進展したと考える。一方で、さらにインパクトのある研究成果として取りまとめるための解析がいくつか必要と考えており、残りの研究期間で集中的にそれらの実験を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、直接細胞を培養しているシャーレに大気圧プラズマトーチの処理を行い、プリオン持続感染神経細胞ScN2aとプリオン非感染神経細胞N2aの感受性の違いがあることを明らかにした。今後の研究では、大気圧プラズマトーチであらかじめ処理を行った培地でこれらの細胞を培養することで感染細胞が除去できるかを調べる。その際、酸化ストレス物質を消去するラジカルスカベンジャーを培地に添加した場合と比較し、培地中の酸化ストレス物質がプラズマによる細胞死に関与しているかの解析も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、プリオン持続感染神経細胞ScN2aとプリオン非感染神経細胞N2aに対して感受性の違いがあることを確認できた。さらには、ラジカルスカベンジャーを用いた実験で酸化ストレス物質の関与も証明できた。次年度は、さらにインパクトのある研究成果として取りまとめるための解析を行う計画である。それらの実験を行うための物品費で使用するとともに、英文校正費用や学会発表費用など、成果公表にかかる費用にも使用する計画である。
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