研究課題/領域番号 |
16K05003
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小柴 康子 神戸大学, 工学研究科, 助手 (70243326)
|
研究分担者 |
石田 謙司 神戸大学, 工学研究科, 教授 (20303860)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 有機半導体 / ナノロッド / pn接合 |
研究実績の概要 |
昨年度までの研究成果をもとに、今年度は。p型有機半導体としては銅フタロシアニン(CuPc)、n型有機半導体としてはオクタフルオロ銅フタロシアニン(F8CuPc)を用いたCuPc/F8CuPc接合ナノロッド作製条件の詳細な検討と、CuPcナノロッドの局所電流電圧測定を試みた。Au蒸着膜上に所定の温度でCuPcを真空蒸着法により50nm成膜し、大気暴露後に同じ基板温度でF8CuPcを50nm真空蒸着した。またCuPc、F8CuPc それぞれ50nmを連続蒸着し積層した。SEM観察よりすべての薄膜中で基板に面外成長したナノロッド構造が観察され、ロッドの直径はいずれも約45 nm であった。ロッドの長さはCuPc薄膜では50-80 nm、大気暴露後積層膜では50-100 nmであったが、CuPc/F8CuPc連続蒸着膜では50-250 nmとより長く成長したロッドが観察された。XPSスペクトルより連続蒸着膜ではF8CuPcが薄膜最表面に存在することがわかり、CuPc/F8CuPc 接合ナノロッド形成には真空中での連続蒸着が有効であった。 CuPcナノロッドの局所電流電圧(I-V)特性評価を導電性カンチレバーを用いたAFM測定により行った。まずPtコートカンチレバーを上部電極として用いてp型のCuPcナノロッドの観察とI-V測定を行った。正負両側で空間電荷制限電流領域を確認でき、ホール移動度を算出するとCuPc薄膜の約10倍の移動度が得られた。薄膜構造よりもナノロッド構造の方がキャリアの移動に有利であると考えらた。市販のPtコートカンチレバーにAlをコートしてCuPc薄膜のI-V測定を試みたところ整流性が観測された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である自発的有機pn接合ナノロッド作製をめざして、昨年度まで検討したpn接合ナノロッドの作製条件をより詳細に検討した。真空中でp型、n型フタロシアニンを連続蒸着することにより、接合ナノロッドが作製できることが分かった。作製したナノロッドの電気特性評価には導電性カンチレバーを用いたAFM測定により行った。上部電極となるカンチレバーの接触面積は約40nmと見積もられ、ナノロッド1本の電気特性を測定できる可能性が示唆された。コンタクトモードAFMによるI-V測定より、ホール移動度を算出し、ナノロッド構造では薄膜に比べて高い移動度を示し、ロッド構造がキャリア移動に優位であることが分かった。市販のPtコートカンチレバーにAlをコートして、下部電極Au、上部電極Alでの測定がAFMコンタクトモードで可能であることが分かり、pn接合ナノロッドの光電変換特性評価へ有効な手法を確立できた。
|
今後の研究の推進方策 |
pn接合ナノロッドの有機太陽電池応用に向けて、ナノロッドの電気特性評価、光電変換特性評価を行うことは重要である。真空蒸着法によるp型、n型ナノロッドとpn接合ナノロッドの作製条件については今年度に詳細に検討を行った。この結果をもとに最適化した作製条件で、コンタクトモードAFMでの電気特性評価に向けてpn接合ナノロッドを作製する。 コンタクトモードAFMを用いたナノロッドの局所I-V測定に関しては、p型半導体であるCuPc薄膜、CuPcナノロッドで今年度検討した測定条件をもとに、pn接合ナノロッドの評価を目指しI-V測定を試みる。有機薄膜太陽電池応用に向けて、暗所、および光照射下でpn接合ナノロッドのI-V測定を行い、pn接合ナノロッドの光電変換特性を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予算の効率的な使用により次年度使用額が生じたため有機半導体pn接合ナノロッドのより精緻な構造・物性評価に必要な物品を購入する。
|