今年度はpn接合ナノロッドの作製条件の最適化、および原子間力顕微鏡(AFM)を用いたpn接合ナノロッドの局所電気特性評価を行い、化学気相成長(CVD)法によるCuPc薄膜上でのオクタシアノ金属フタロシアニン(MPc(CN)8)ロッドの生成を試みた。p型半導体として、銅フタロシアニン(CuPc)、n型有機半導体としてはオクタフルオロ銅フタロシアニン(F8CuPc)を用い、基板温度制御下の真空中連続蒸着法により、直径約45 nm、長さ50-250nmのナノロッドを作製した。XPS測定により最表面にはCuPc由来のピークは検出されず、F8CuPc由来のピークが検出されたことからpn接合ナノロッドの作製が示唆された。XRD測定より、CuPcとF8CuPcは格子整合性がよいと考えられ、p型有機半導体ナノロッド上でn型有機半導体がエピタキシャル的にロッド成長したと考えられた。一方、CuPc蒸着膜を基板として用いAr置換減圧下の封管中で原料であるテトラシアノベンゼン(TCNB)と300℃で加熱し、CVD法によるMPc(CN)8)ロッドの生成を試みた。反応後の基板のSEM像より、CuPc薄膜上にロッド状の形状が観察され、CuPc蒸着薄膜上でのMPc(CN)8)ロッド成長の可能性が示された。AFMの導電性カンチレバーを用いてCuPc / F8CuPcナノロッドの表面像・電流像観察と局所電流電圧(I-V)測定を行った。表面像からナノロッド構造由来の凹凸が確認できた。この表面像の凹凸部分のロッドと考えられる凸部分でI-V測定を行った。上部電極をAlで行った測定では、整流性が観測されpn接合ナノロッドのダイオード特性を観測することができた。
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