研究実績の概要 |
今年度の研究としてまず, 検出システムを構成するファイバーや使用する光検出器デバイスの検討を行った。開発中の検出器では中性子の核反応による微弱なシンチレーター光を効率よく収集する必要がある。また, 光計測を行う光電子増倍管などの電子デバイスは強い放射線場の影響を避けるため検出部より遠く離れた位置に設置する必要がある。このため光発光部とそれを検出する検出部は約10m程度の距離が生じる。この2つの間を効率よく光を伝送するために本研究では光ファイバーを用いることを予定しており, 検出器に光を導入するファイバーの特性評価が重要である。今年度の研究において複数の光ファイバーにおける光伝送を実験的に計測した結果, 径が2mm程度の大きいアクリル系のファイバーが集光に関して優れており, 当該研究の要求を満たす性能を持っていることが明らかとなった。また光電子増倍管の選択には, シンチレーター光の濃淡を2次元イメージングする予定であることからも, MAPMT(マルチアノード光電子増倍管)が適用できることが調査と検討の結果明らかとなった。またホウ素含有物質と有機シンチレーターとの接合と光発光特性などについてもモンテカルロシミュレーション等を用いて検討を行った。その結果としては, 中性子の進行方向に向かって近い側に薄いホウ素含有材料を吸収材として配置し, その後, 多段階に徐々にホウ素濃度が高くなるよう配置することで, 熱, 熱外, 高速の成分の信号分離が可能であることが判明した。また濃度を適切に変更することにより, 高線量場にて開発のための実験ができない場合にも, 低線量中性子場でも応答特性を評価できることが計算により明らかになった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も検出器の開発と進める。特に今後は光ファイバーとマルチアノード光電子増倍管との接続によるシンチレーター光のパターン計測装置を組み上げ, 実際に光計測実験を進める。また, 中性子の入射によるパターン形成については, どのようなパターンが線量評価に有効であるかを今後シミュレーションにて詳細に検討する。特に中性子束をホウ素含有薄膜にてアルファ線に変換し, 最終的に2次元濃淡画像を得る必要があるが、その際混在する高線量ガンマ線の影響や散乱中性子による画像ノイズをどのように効果的に低減できるか, これらについて十分に検討し, 装置開発に反映させる。さらに, 中性子場を用いる性能評価のための実験については大阪大学など他大学と共同して着実に進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
検出部のシンチレーターならびにホウ素含有素材の試験を行うための購入資金を予定していたが, より詳細な設計計算が必要であることが判明したため, 本年度ではシミュレーション計算のみ行い, 検出部を構成する部材, 薬剤等の購入は次年度以降になったため。
|