研究課題/領域番号 |
16K05005
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
宮丸 広幸 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80243187)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中性子 / 放射線計測 / BNCT / シンチレーター |
研究実績の概要 |
p-Li核反応を原理としたBNCT用加速器中性子源から中性子束をエネルギー群ごとに評価可能な検出法を開発している。研究では1/v法則が適用される範囲の中性子束を対象としておよそ800keV程度を計測可能エネルギーの上限としている。実験では吸収体の厚さを変更しながら中性子計数率の変化を測定する。あらかじめモンテカルロシミュレーション計算にて導出された厚さ位置ごとの反応率データを応答関数とし、計数率データから逆問題を解くことでエネルギー群ごとの中性子束を推定する。本年度は解析手法として、勾配降下法とベイズ推定法を用い、両者の違いについて研究を進めた。エネルギー5群の中性子分布(推定値)を乱数で10000通り作成し、検出器応答関数を通した値(測定値)から2つの手法を用いて推定し、推定結果との差を検討した。エネルギー群は0.5~100eV, 100eV~1keV, 1kev~10keV, 10keV~100keV, 100keV~800keVに分けて解析を行ったが、最も良好に推定できたのが100keV~800keVであり、次いで0.5~100eVの領域であった。また全エネルギー群で概ね80%以上の一致が得られたがベイズ推定法の方が勾配降下法よりも推定値が全般に良好であった。これら研究成果について3件の学会発表を行った。次に、中性子を検出するセンサー部の銀活性硫化亜鉛(ZnS(Ag))に窒化ホウ素粉を添加したシンチレーターを製作すると共に、リチウム6ドープされたZnS(Ag)についてもその検出特性を実験的に評価した。中性子によるシンチレーター光は集光レンズと光ファイバーを通すため光量のロスが生じる。窒化ホウ素粉末+ZnS(Ag)の方が発光量が大きくS/Nが高いことが実験的に明らかになった。しかしながらリチウム6ドープされたZnS(Ag)に加えて感度の点では劣ることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では中性子束の検出器の開発を行っており、それには強い中性子場が必要である。当初の研究計画では大阪大学の強力中性子発生装置を利用して装置を開発する予定で準備を進めていたが、2018年6月の大阪北部地震により当該中性子発生用加速器は不幸にも動作不能となってしまった。この影響により予定していた環境での検証実験が当面不可能となったため実験的研究面において遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
大阪大学の強力中性子発生装置は2019年度に復旧する予定であり、改めて実験を行う予定であるが、学内に所有する中性子源を用いた実証実験も並行して進める予定である。また中性子束推定法のさらなる改良については、パラメーター不要の勾配法などについてより検討を深める。またベイズ推定法では誤差データを含む場合の影響について評価する。検出器の開発においてはマルチアノード型の光電子増倍管を用いることでより高度化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では大阪大学の強力中性子発生装置を利用して装置を開発する予定で準備を進めていたが、昨年の大阪北部地震により当加速器は動作不能となってしまった。この影響により強い中性子場での検証実験が当面不可能となったため装置開発費用の執行が停滞している。2019年度に復旧する予定であり、早急に研究を進める予定である。
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