これまでガスセンサの代表的な構成材料であるSnO2のクラスター計算を行ない、センサの特性の理論解析を進めてきたが、昨年度は同様の計算を湿度によって特性が変化するSr-Ca-Cu-O超伝導材料でも行い、この材料の湿度センサ材料としての応用可能性を理論面から調べた。計算時間を短縮するために、簡略化したSr-Ca-Cu-Oクラスターを作製し、クラスターの[100]および[110]方向からH原子、OH-イオン、H2O分子を接近させ、それらのクラスター表面への吸着状況、クラスター内に入り込んで相互作用をするインターカーレーションの有無を中心に調べた。 計算の結果、Sr-Ca-Cu-Oクラスターの[110]方向にH原子、OH-イオンおよびH2O分子を接近させた場合にこれらがインターカーレーションを生じてクラスターが膨張し、超伝導特性を変化させる可能性が高いことが示唆された。これらの現象は[100]方向に接近させた場合には観測されなかった。これらのことから超伝導特性を観測することでSr-Ca-Cu-O超電導材料は湿度センサとして働くことが示唆された。 今後はより現実に近い大きいサイズのSr-Ca-Cu-Oクラスターを用いて同様の計算を行なうとともに、実際の表面上体に近づけるために、クラスター表面に酸素分子を吸着させた上で計算を進め、湿度による超伝導特性の変化を求めるとともに、Sr-Ca-Cu-Oクラスターの計算を進める上で得られた知見を、本来のガスセンサ材料であるSnO2クラスターにも応用する予定である。
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