研究課題/領域番号 |
16K05020
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
春山 雄一 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 准教授 (10316036)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 機能性分子材料 / 配向 / 微小領域 / XAFS |
研究実績の概要 |
はじめに、微小空間領域のXAFS測定ができるように、アパーチャーの機能を有するスリットを設計し、製作を行った。その後、チャンバーに設置し、立ち上げ調整を行った。次に、機能性分子材料として、側鎖に桂皮酸を有する側鎖型の高分子液晶である光反応性高分子液晶を選択し、この機能性分子材料の基本的な分子の配向に関する性質を調べた。スピンコート法により作成した薄膜と直線偏光した紫外光照射とその後の熱処理により作成した配向膜に対して、表面近傍の液晶分子の配向性を調べるために、全電子とオージェ電子収量法による軟X線を用いた炭素K端のXAFS測定を行った。その結果、表面近傍の液晶分子は表面の影響により、表面に平行に配向しやすい傾向があることを示した。この光反応性高分子液晶に対し、ナノインプリントすることにより構造制御された薄膜中の液晶分子の配向が、偏光顕微鏡による観察や回折強度の測定により報告されてきたが、今回、インプリントした光反応性高分子液晶薄膜の表面近傍領域における分子の配向性を評価するため、軟X線を用いた炭素K端のXAFS測定を行った。スピンコート法により作成した光反応性高分子液晶薄膜に対し、深さ200nm、2μmのライン&スペースパターンをインプリントすることにより試料を作成した。炭素K端のXAFS測定において、励起光エネルギー285eVに炭素1sからπ*準位への遷移に由来するピークが出現し、励起光の入射角度を変化させたときにピークの強度が変化したことから、光反応性液晶分子が表面に平行に配向していることを示し、インプリントした光反応性高分子液晶の表面近傍の配向性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の予定は、(1)アパーチャーを設計・製作を行い、その後、チャンバーに取り付け、微小空間領域のXAFS測定ができるように立ち上げ調整を行う。(2) アパーチャーの設置後に、インプリントした光反応性高分子液晶薄膜のXAFS測定を行い、インプリントした構造のパターンが大きい場合における機能性分子材料の配向性に関する知見を得ていくことが主な予定である。これに対する進歩状況は、(1) アパーチャーの機能を有するスリットを設計・製作を行い、その後、チャンバーに設置し、立ち上げ調整を行った。(2) 深さ200nm、2μmのライン&スペースパターンをインプリントした光反応性高分子液晶薄膜に対し、XAFS測定を行い、薄膜中の液晶分子が表面に平行に配向していることを示し、インプリントした光反応性高分子液晶の配向性を明らかにした。以上のように、実験計画に予定していたことをほぼ遂行したことから、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、軟X線領域のエネルギーを利用できる放射光ビームラインを用いて、微小領域のXAFS実験を行い、機能性分子材料の配向性やその3次元の空間分布を調べ、配向に関するメカニズムを明らかにしていくことである。そのために、次の3つのことを行っていく。(1) 機能性分子材料の局所的な配向性に関しては、インプリントにより作成する構造パターンを徐々に小さくし、微小領域のXFAS測定を行い、配向性を調べることにより、機能性分子材料の配向性に関する知見を得ていく。 (2) 機能性分子材料の配向性に関する空間分布を調べるには、2軸のステージスキャンシステムの設置が必要不可欠となり、設置に向け準備を行っていく。(3) 機能性分子材料における配向性の3次元空間分布を調べるには、2軸のステージスキャンシステムのほかに、薄膜中の深さ方向に依存した配向性を評価する必要がある。そのため、検出深度が、全電子やオージェ電子収量法と異なり、より深い所を検出できる蛍光収量法によるXAFS測定システムを導入していく。これらの計測システムを整備することにより、機能性分子材料の3次元的な配向性を調べ、配向メカニズムに関する知見を明らかにしていく。
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