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2017 年度 実施状況報告書

走査型透過軟X線顕微鏡による超軽元素2次元化学状態分析法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K05022
研究機関分子科学研究所

研究代表者

大東 琢治  分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 助教 (50375169)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード走査型透過X線顕微鏡 / 軽元素分析 / 全反射型ゾーンプレート / リチウム検出
研究実績の概要

28年度までに50 eV付近が利用できるようにビームラインの分光光学系のチューニングを行なってきたが、29年度はこれに加えて、100, 150, 200 eVなどの高次光を低減することで主目的である50 eVのX線強度を相対的に上げることを目的として、出射部用の窓を従来の100 nm厚の窒化ケイ素から200 nm厚の炭化ケイ素に変更した。また50 eVの測定専用の集光用光学素子として、従来のものより支持膜が薄いために高効率で、長焦点である透過型Fresnel Zone Plate (FZP)を開発した。このセットアップによって、炭酸リチウム粉末をマイクログリッドに塗布したものを試料として用い、初となるリチウムK吸収近傍の透過吸収による顕微NEXAFSスペクトルを得ることができた。しかしスペクトル形状とバックグラウンドについては文献などと比較して議論の余地があるため、この成果については目下、検証中である。
全反射型集光用光学素子(TRZP)を製作した。電子線リソグラフィ装置を用いて、最外輪帯ピッチ幅を長軸側で659 nm、短軸側で223 nmの輪帯パターン描画を行い、リフトオフ法によってシリコン基板上に金とチタンで30 nm厚のパターンを製作した。製作後にSEMを用いてパターン描画の確認を行ない、設計通りであることを確認した。このTRZPを走査型透過X線顕微鏡(STXM)に導入し、焦点位置近傍でピンホールを2次元走査してファーフィールド像を得ることで、400 eVにて集光することを確認できた。しかしパターン製作後の加工の過程において光学素子表面にコンタミや傷が生じてしまったことから、30年度には加工方法を変更することで、光学素子の品質向上を図り、より詳細な評価を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

29年度の計画は2次電子検出器とTRZPを用いた光学系の構築であった。TRZPの製作を行い、実際に集光を確認する事が出来たが、2次電子検出器については、動作させることができなかった。その原因は、STXM測定チャンバーが、共同利用でSTXMを利用する主に有機試料系ユーザーの、測定に伴う有機物の飛散と堆積によって年間を通じて汚染が進んだ結果、真空度が著しく悪化し、チャンネルトロンが動作可能な真空度(~10^-6 mbar)まで到達しなくなったためである。そこで30年度は、真空度の改善及びその維持を実現した上で、2次電子検出器を用いたSTXM光学系の構築を行う。
またその一方で、高効率及び低エネルギー領域対応の長焦点を持つFZPの開発が可能であったことにより、取得が困難であることが予想されていた、透過吸収によるリチウムK吸収端における顕微NEXAFSスペクトルを得る事が出来た。そのため、超軽元素検出可能なビームライン構築という最終的な目標に対しては、予定通りの進捗があった。

今後の研究の推進方策

本研究課題を遂行しやすくするため、29年度末に低エネルギー領域で高いフォトンフラックスを得るために設計した、低エネルギー分解能の回折格子を分光器に導入することができた。新回折格子導入によるビームラインの高フラックス化に伴い、仮想光源である出射スリットをより小さく設定可能となるので高空間分解能が期待されることと、検出感度が向上し、2次電子を得やすくなることも期待される。そのため、30年度は新グレーティング利用のための分光器の調整から開始する。
TRZPの開発について、加工プロセスを見直し、より高効率となるTRZPの製作を行う。その集光性能評価に対し、29年度は検出器としてフォトマルチプライヤーのみを用いたが、2次元検出器であるCCDカメラを付加的に用いることで、より精細な評価を行う。
STXM測定チャンバーの想定外の有機物汚染による真空度悪化対策として、測定チャンバーにオゾンアッシャーを導入して、内部に堆積する有機物の除染を行う。また追加でイオンポンプを設置することにより、真空度の改善を図る。
透過型FZPを用いたSTXM光学系によって透過吸収によるリチウムの顕微NEXAFSスペクトルを取得することができたので、TRZPと2次電子検出器を用いた光学系と並行して推進し、両者の可能性について模索する。
29年度得られたリチウムのスペクトルについては、試料ではないマイクログリッド部分にも低強度ではあるものの、同様のピークが計測された。この原因の究明と除去手段を検討する。また応用試料として、予定しているリチウム2次電池試料とともに、JAMSTECとの共同研究において提供を受けた鉱物薄片試料に含有されているリチウムの2次元化学状態分析を行なうことを予定している。

次年度使用額が生じた理由

次年度に構築する2次電子検出光学系の、検出器設置環境の向上のためのSTXMチャンバー内の追加加工が必要となったため、当該金額を次年度使用額とした。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] orphology control in polymerized high internal phase emulsion templated via macro-RAFT agent composition: Visualizing surface chemistry2018

    • 著者名/発表者名
      A. Khodabandeh, R.D. Arrua, B.R. Coad, T. Rodemann, T. Ohigashi, N. Kosugi, S.C. Thickett and E. Hilder
    • 雑誌名

      Polymer Chemistry

      巻: 9 ページ: 213-220

    • DOI

      10.1039/C7PY01770G

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Spatially Resolved Distribution of Fe Species around Microbes at the Submicron Scale in Natural Bacteriogenic Iron Oxides2017

    • 著者名/発表者名
      H. Suga, S. Kikuchi, Y. Takeichi, C. Miyamoto, M. Miyahara, S. Mitsunobu, T. Ohigashi, K. Mase, K. Ono and Y. Takahashi
    • 雑誌名

      Microbes and Environments

      巻: 32 ページ: 283-287

    • DOI

      10.1264/jsme2.ME17009

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 走査型透過X線顕微鏡を用いた3次元化学状態マッピング法の開発2018

    • 著者名/発表者名
      大東 琢治、稲垣 裕一、伊藤 敦、篠原 邦夫、刀祢 重信、小杉 信博
    • 学会等名
      日本放射光学会年会
  • [学会発表] Advances in Scanning Transmission X-ray Microscopy at UVSOR-III Synchrotron2017

    • 著者名/発表者名
      T. Ohigashi, Y. Inagaki and N. Kosugi
    • 学会等名
      24th Congress of the International Commission for Optics
    • 国際学会
  • [学会発表] Recent status of biological imaging at scanning transmission X-ray microscopy beamline2017

    • 著者名/発表者名
      T. Ohigashi
    • 学会等名
      第26回バイオイメージング学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] Advanced Analyses in Scanning Transmission X-ray Microscopy at UVSOR-III Synchrotron2017

    • 著者名/発表者名
      T. Ohigashi, Y. Inagaki and N. Kosugi
    • 学会等名
      24th International Congress on X-ray Optics and Microanalysis
    • 国際学会
  • [学会発表] UVSORの走査型透過X線顕微鏡の現状2017

    • 著者名/発表者名
      大東 琢治、稲垣 裕一、小杉 信博
    • 学会等名
      X線結像光学シンポジウム

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公開日: 2018-12-17  

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