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2017 年度 実施状況報告書

磁気対相関関数を用いた局所磁気構造解析法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K05023
研究機関国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

研究代表者

樹神 克明  国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 物質科学研究センター, 研究主幹 (10313115)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード磁気対相関関数 / 中性子散乱
研究実績の概要

磁気対相関関数(磁気PDF)を用いた局所構造解析の適用例としてスピングラスを示すMn0.5Fe0.5TiO3の局所磁気構造を調べた。その結果スピングラス状態において短距離磁気相関しかもたないこと、2つの異なる磁気構造が競合していることを反映した磁気PDFが得られた。
磁気PDF解析が特に短距離磁気相関しかもたない磁性体の磁気構造を調べる上で有効であることを示す目的で、約20 K以下でスピングラスを示すイルメナイト化合物Mn1-xFexTiO3をその適用例として取りあげた。先行研究からは、この系はx=0(MnTiO3)およびx=1(FeTiO3)では反強磁性長距離秩序を示しそれぞれ異なる磁気構造をもつが、x=0.5付近では2つの磁気構造の競合により長距離秩序をもつことができず、スピングラスを示すと考えられている。Mn0.5Fe0.5TiO3の粉末試料を固相反応を用いて合成し、J-PARCに設置されている高強度全散乱装置NOVAにおいて中性子回折実験を行った。得られた中性子回折強度から磁気散乱成分を抽出し磁気PDFを導出した。スピングラス状態における磁気PDFをみると、磁気対相関ピークの強度が距離とともに急激に減少しており、このことはスピングラス状態においては短距離の磁気相関しかもたないをあらわしている。また得られた磁気PDFはMnTiO3およびFeTiO3の磁気構造から期待される磁気PDFの線形結合でよく再現できることがわかり、先行研究で指摘されている2つの磁気構造の競合と一致する結果が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度に磁気PDF解析手法の一連の流れをほぼ確立することができている。さらに平成29年度はこの手法をスピングラス物質Mn0.5Fe0.5TiO3に適用することによって、スピングラス状態における短距離磁気相関を観測し、さらに局所磁気構造を調べて2つの磁気構造が競合していることを確認することができた。これによってこの手法が短距離磁気相関しかもたない磁性体の局所磁気構造を調べる上で有効であることを確認できたと考えている。

今後の研究の推進方策

さらに磁気PDF解析法を用いて短距離磁気相関をもつ磁性体の局所磁気構造解析を行っていく。今年度は低温で反強磁性長距離秩序によるブラッグ散乱と大きな散漫散乱が同時に観測されている金属磁性体を取り上げ、粉末試料についてJ-PARCに設置されている高強度全散乱装置NOVAを用いて中性子回折実験を行う。得られた回折強度データから磁気PDFを導出して局所磁気構造を調べることにより、反強磁性長距離秩序と短距離秩序が共存する理由を明らかにする。このような研究例を増やしていくことにより、磁気PDFを用いた局所磁気構造解析の有効性をアピールしていく。

次年度使用額が生じた理由

出張にかかる費用、および試料合成用の試薬の購入にかかる費用が予定していた金額より少なかったため。
磁気PDF解析を適用する候補物質を合成するための試薬の購入、それら物質の中性子散乱実験に必要となる消耗品の購入に充てる。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Neutron-scattering study of yttrium iron garnet2018

    • 著者名/発表者名
      S. Shamoto, T. U. Ito, H. Onishi, H. Yamauchi, Y. Inamura, M. Matsuura, M. Akatsu, K. Kodama, A. Nakao, T. Moyoshi, K. Munakata,T. Ohhara, M. Nakamura, S. Ohira-Kawamura, Y. Nemoto, and K. Shibata
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 97 ページ: 054429-1-9.

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.97.054429

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Alternative Equation on Magnetic Pair Distribution Function for Quantitative Analysis2017

    • 著者名/発表者名
      K. Kodama, K. Ikeda, S. Shamoto, and T. Otomo
    • 雑誌名

      Journal of the Physical Society of Japan

      巻: 86 ページ: 124708-1-8

    • DOI

      10.7566/JPSJ.86.124708

    • 査読あり
  • [学会発表] 磁気PDF解析を用いたMn0.5Fe0.5TiO3のスピングラス状態における短距離磁気相関の観測2018

    • 著者名/発表者名
      樹神克明、本田孝志、池田一貴、社本真一、大友季哉
    • 学会等名
      量子ビームサイエンスフェスタ
  • [学会発表] 原子対相関関数を用いた強相関電子系の局所構造解析2017

    • 著者名/発表者名
      樹神克明
    • 学会等名
      日本磁気学会 第60回化合物磁性材料専門研究会
  • [学会発表] 中性子PDF解析でみる強相関電子系の局所構造歪み2017

    • 著者名/発表者名
      樹神克明
    • 学会等名
      放射光利用研究セミナー「結晶PDFで観る短距離~中距離レンジ構造の世界」
  • [学会発表] J-PARC全散乱装置NOVAを用いた磁気PDF解析法の開発2017

    • 著者名/発表者名
      樹神克明、池田一貴、社本真一、大友季哉
    • 学会等名
      日本物理学会2017年秋季大会
  • [学会発表] 磁気対相関関数によるスピングラス系Mn0.5Fe0.5TiO3の局所磁気構造の観測2017

    • 著者名/発表者名
      樹神克明、本田孝志、池田一貴、社本真一、大友季哉
    • 学会等名
      日本物理学会2017年秋季大会
  • [学会発表] 原子対相関関数を用いた鉄系超伝導体母相の局所構造解析2017

    • 著者名/発表者名
      樹神克明、石角元志、池田一貴、社本真一、大友季哉
    • 学会等名
      日本中性子科学会年会
  • [学会発表] Local Structural Analysis on the Parent Compound of Iron-Based Superconductor PrFeAsO by Atomic Pair Distribution Function2017

    • 著者名/発表者名
      K. Kodama, M. Ishikado, K. Ikeda, S. Shamoto, and T. Otomo
    • 学会等名
      The 15th International Conference on Advanced Materials
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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