研究課題/領域番号 |
16K05025
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
初川 雄一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (40343917)
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研究分担者 |
塚田 和明 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主幹 (30343916)
高田 淳史 京都大学, 理学研究科, 助教 (90531468)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Tc-95m / コンプトンカメラ / ETCC / 医療用RI |
研究実績の概要 |
コンプトンカメラ撮像実験の対象となる高エネルギーガンマ線を放出するテクネチウム-95m(Tc-95m)をタンデム加速器において濃縮モリブデンターゲットへの陽子ビーム照射により生成した。照射後ターゲットから化学分離操作により放射性テクネチウムを分離し、コンプトンカメラ撮像実験に供した。Tc-95mは約60日の半減期で3本の異なるエネルギーのガンマ線(204 keV, 582 keV, 835 keV)を放出する。本研究で使用するコンプトンカメラはETCC(Electron Tracking Compton Camera)で前段部のガスカウンターと後段部のシンチレーション検出器に分かれており、前段部で散乱電子の位置とエネルギー(E1)を検出し後段部で散乱され減衰したガンマ線エネルギー(E2)を測定する。ここで観測されたガンマ線と電子の位置情報と、エネルギー情報がらコンプトン散乱の関係式に基づいて解析を行うことによりガンマ線の放出方向の推定が可能となる。このデーターからME-LM近似法により線源像を再構築することができる。観測されたエネルギースペクトルから204 keV, 582 keV, 835 keVの3つガンマ線エネルギーでゲートを設定しガンマ線エネルギーごとの像を得た。これにより像の分解能がガンマ線エネルギーに依存していることが分かった。 本研究では陽子照射し放射性テクネチウムを分離したモリブデン試料を冷却後に三酸化モリブデンに転換することにより再利用可能とする方法を開発した。回収された三酸化モリブデンはX線回折法により同定を行った。これにより高価な同位体濃縮試料の再利用を可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に進展している。 テクネチウム-95mのETCCによる撮像に成功し、さらに異なるエネルギーによる像の位置分解能の違いを観察できた。 さらに高価な濃縮同位体を用いる三酸化モリブデンの回収法を確立した。これにより照射ターゲットの繰り返し利用が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
現在申請中のTc-95(半減期20時間)許認可が通り次第、Tc-95のETCC撮像実験を行う。Tc-95mは60日の半減期を有するRIであり、基礎的な実験には有利であるが、実際の診断に用いるとなると長すぎる。 これに比べ20時間の半減期のTc-95は実用の可能性が高くより現実的な研究が望める。 本研究では人体を模擬したファントム中にTc-95線源を設置しETCCでの撮像における位置分解能や人体中でのガンマ線の散乱、吸収の評価を行うことにより従前から盛んに用いられておりTc-99m/SPECTに対する優位性の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿した論文の投稿料として残していたが、出版作業が次年度になった次年度に積み残した。
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