研究課題/領域番号 |
16K05030
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
河内 哲哉 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 本部 経営企画部, 次長(定常) (40343941)
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研究分担者 |
錦野 将元 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, グループリーダー(定常) (70370450)
川染 勇人 香川高等専門学校, 情報工学科, 講師 (90391325)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エックス線光学 / プラズマ科学 / 高強度レーザー |
研究実績の概要 |
近年、フェムト秒からピコ秒のパルス幅を持つ高輝度X線発生技術が確立、その利用が急速に拡大しつつある。 これらのX線源の性能を最大限引き出すためには、高効率で高耐力なX線集光素子が必要不可欠であるが、 現状で、そのような光学素子が実現しているとはいえない。最近、我々はX線の蜃気楼現象をプラズマ中で初めて観測したが (Nature Commun. 2013)、その際にプラズマの特殊な電子密度分布が、 高品質でほとんどロスの無いX線の凹レンズとして作用することを見いだした。 本研究では、高輝度パルスX線源の高度な利用に資するために、プラズマのX線光学素子としての可能性を突きつめ、プラズマの電子密度の空間分布を制御することにより、X線を高効率に集光できるプラズマ凸レンズの生成技術を確立し、 集光径サブミクロンのX線集光の実証をめざす。 平成28年度は、金ターゲットと超短パルスチタンサファイアレーザーを用いたプラズマ光学素子(X線ビームスプリッター)生成の最適条件を確認した。プローブ光に軟X線レーザー(波長13.9nm)を用いることで、プラズマ光学素子形成に至る膨張ダイナミクスの時間発展を明らかにすることができた。 チタンサファイアレーザーの強度や膨張時間の違いにより、生成したプラズマ光学素子の形状が変化し、プラズマ凸レンズを生成させるための屈折率変化に与える影響を評価している。また、チタンサファイアレーザーの3倍波(波長266 nm)をプローブ光とするプラズマ観測用の干渉計測装置の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度において、計算機シミュレーションに関しては、炭素をターゲットとして用いたプラズマ光学素子に関する計算を開始した。 実験に関しては、凸レンズの効果を持つプラズマ光学素子となり得る超短パルスレーザー生成プラズマの計測に着手し、実験データが得られ始めている。また、 軟X線レーザーを用いた計測によりプラズマ光学素子としての機能を持つプラズマの生成条件についても確認しており、研究はおおむね順調に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
炭素をターゲットとして用いたプラズマ光学素子に関する計算を継続する。 また、実験に関しては、ターゲットを変更して、プラズマ凸レンズとなるような 密度勾配をもつ照射条件について実験と計測を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年6月に予定している理研SACLAでのX線実験において使用する予定のプラズマ生成用の照射材料の仕様を精査するための予備実験が年度末までかかったため、研究予算を効率的に執行するために照射材料購入費を繰り越すこととした。 また、平成28年度の研究成果を平成29年5月に行われる国際会議において発表するため、その旅費を繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した予算は、平成29年度5月の国際会議における研究成果の発表のための旅費と、平成29年6月に予定している理研SACLAでの実験のための照射材料購入費として使用する。
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