研究課題
中途採択で半年の研究期間となった初年度は,量子臨界現象を引き起こす秩序変数を担う,磁性・格子・価数,及びその結合の各々に着目し,秩序波数や微視的な電子状態について調べた.磁性に関しては,YbRh2Si2の量子臨界点に隣接している磁気相について,Co置換系試料を対象とした中性子散乱実験を行い,新たな秩序波数を明らかにすることに成功した.格子に絡む(Sr,Ca)3T4Sn13(T:Rh, Ir)については,秩序波数やソフトモードの濃度依存性を放射光X線非弾性散乱を中心に調べ,量子臨界点に向けた変化を捉えることに成功した.磁性と価数が結合したEu系については,基準となるEu3価のJ多重項励起構造の決定を試み,EuPd3を対象とした中性子非弾性散乱実験から,3価金属における多重項励起の観測に成功し,価数揺動状態の解明の鍵となる重要な知見を得るという成果に繋がった.また磁性と格子が動的に結合するRAl2(R:希土類)について,中性子・放射光を相補的に用いた非弾性散乱実験により,両者の結合状態形成の理解に向けたデータを得ることが出来た.以上,初年度には,様々な秩序変数を対象とした物質系について,主に秩序波数などの基礎的データが得られた点で,重要な成果が得られた.
3: やや遅れている
採択が年度半ばになったことにより,主に環境整備や実験の実施について若干の遅れがある.一方で,実施した実験については,それぞれ重要な成果が得られており,全体的な進捗に大きな問題はない.
本年度得られた成果を発展させ,各秩序変数に対応した量子臨界現象の理解に迫る.またより普遍的な理解を目的として,他の物質系にも同様の研究を発展させることを計画している
採択時期が半年ずれたため,主たる支出が執行出来ず,次年度にずれ込んだ.次年度において,遅れた分の環境整備及び実験による旅費支出を計画的に執行する計画である.
当該年度に執行出来なかった,実験環境整備用アクセサリや試料ホルダ等の購入,及び国内外での実験実施を進める計画である.
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
J. Phys.: Conf. Ser.
巻: 807 ページ: 032002 1-4
10.1088/1742-6596/807/3/032002
Phys. Rev. B
巻: 93 ページ: 241112(R) 1-5
10.1103/PhysRevB.93.241112
巻: 94 ページ: 045116 1-8
10.1103/PhysRevB.94.045116
J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 85 ページ: 114711 1-5
10.7566/JPSJ.85.114711