研究課題/領域番号 |
16K05036
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大西 順也 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (20376495)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ハイパフォーマンス・コンピューティング / 混相流 / 相変化 / 流体工学 / 熱工学 |
研究実績の概要 |
本研究では,沸騰における気泡運動と,それによって誘起される流動,伝熱を総合的に理解することで,沸騰伝熱の定量的予測,制御を実現することを目的としている.具体的には,1) 沸騰現象に対するマルチスケールシミュレーション技術の開発,2) 気泡運動に伴う熱輸送機構の解明,3) ミクロ液膜の構造,生成・消滅過程の解明,の3つの課題に取り組んでいる. H28年度の研究では,孤立気泡の成長・離脱過程の数値シミュレーション(マクロスケール),および,キャビティ内部における残留気相の成長過程の数値シミュレーション(ミクロスケール)を統合し,沸騰サイクル全体のシミュレーションを実現するために,階層的な構造を持つ計算格子を導入することで,気泡や加熱面の近傍などに,局所的に細かい計算格子を配置することを可能にした.また,階層レベルの異なる格子間で授受するデータの補間に関して,保存則考慮の有無,計算ステンシルなど,特性の異なる補間方法について精度等を検討した.さらに,数値シミュレーションの基礎検証として,細管内を上昇する気泡のシミュレーションを実施し,既存の実験結果や計算結果と比較した.その結果,気泡上昇速については,実験結果と計算結果が概ね一致することが確認できた.しかし一方で,条件によっては,気泡形状に不一致が見られることもわかった.次年度以降では,当初計画した事項に加え,本件に関する調査を進める予定である. 上記で述べた細管内を上昇する気泡のシミュレーションの精度検証,ならびに,流体解析の計算速度の向上に関して,国内発表2件を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した事項,すなわち,階層型格子の導入,階層レベルの異なる格子間で授受するデータの精度検証は,いずれも計画通りに実施することができた.また,計画にはないものの,気泡挙動のシミュレーションに関する予備的な精度検証も実施することができた. 階層型格子の導入は,特に大きな問題もなく,完了した.格子間データ授受の精度については,概ね期待していた結果が得られた.一方で,細管内上昇気泡のシミュレーションにおいては,予期しなかった課題が見つかり,今後の対応が必要となった.
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今後の研究の推進方策 |
まずは,新たに見つかった課題に関して,モデルの改良,および,さらなる精度検証を実施する.その後は,当初の計画通り,階層格子を用いて,沸騰時の気泡挙動に関する解析を進める. なお,追加の作業量はあまり多くはないと思われるため,全体のスケジュールに大きな変更はしない.
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次年度使用額が生じた理由 |
発売が遅れたことから,予定していたワークステーションの購入を見送った.また,実行した計算に大きな規模のものがなく,現有の計算機で対応できたことから,スパコンの利用を取りやめた.
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次年度使用額の使用計画 |
予定のものが発売されたため,ワークステーションを購入する.また,今後は計算規模が大きくなることが見込まれるため,スパコン利用量を増やす予定である.
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