研究実績の概要 |
結晶などの非線形離散構造において出現する非線形局在モード(Intrinsic Localized Mode, ILM)/離散ブリーザー(Discrete Breather, DB)の励起および移動性についての解析を行った。特に実在の物理系での生成観測に必要であるILMの励起方法および移動特性予測のために下記の数位解析を実施した。 (a)格子系の境界から複数のパルスを入射しILMが生成されるかについて検討した。パルスの振幅、入射間隔を様々に変更して解析を行いILMの生成条件を解析した。また生成後のILMの振る舞いを調べた。これらの解析からILMを現実の物理系で生成する場合に必要な条件を絞りこむことが可能になると期待される。 (b)結晶内を局在性を保ったまま伝播する移動型ILMについてその移動性を対称性の異なる2つの静止型ILMのエネルギー差で定義されるパイエルスナバロ(PN)ポテンシャルに着目し、PNポテンシャルを最小化する結合強度の組み合わせを探索した。得られた結果は結晶内でのILMの移動性を制御する物性パラメータの定量化に役立つと考えられる。 (c)実在材料の物性に対応するパラメータを設定した力学モデルにおいて移動型ILMの構造を詳細に検討した。移動型ILMと共存して系全体に励起される線形波(テイル)の出現条件を解析した。振動数と波数を軸とk-ω空間におけるILMのスペクトル分布とテイルの励起についての整理を行い、ILMの移動速度と内部振動数からテイルの生成条件を示した。 (d)移動型ILMの特性解析を解析的に行うことを目指して、良い移動性をサポートする第2近接相互作用を含む格子系について、連続体近似方程式系を構築して波動伝ぱ特性を解析した。
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