研究課題/領域番号 |
16K05043
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
堀江 知義 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (40229224)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 抵抗スポット溶接 / 電流-熱-接触変形 / 多重連成メカニズム / 接触電気抵抗 / マルチスケー ル解析 / ミクロ解析 |
研究実績の概要 |
本研究は,抵抗スポット溶接中に生じている電流,熱,接触変形,弾塑性変形,接触電気抵抗,接触熱抵抗などの物理現象がミクロな効果も含めて相互に影響を及ぼしあう,多重連成現象の定量的な評価を行い,連成CAEの開発と応用を目指すものである。 初年度は,既開発の電流-熱-接触変形連成解析コードによる予備解析,検証実験の条件設定を行い,ミクロ接触電気抵抗解析機能を有するマルチスケール解析コードの開発,溶接実験と温度測定系の準備を進めた。 (1) 電流-熱-接触変形連成解析コードによる実験条件の決定:既開発の電流-熱-接触変形連成解析コードを用いて,連成効果検証実験の条件設定を行った。ミクロ現象である接触抵抗に関して6通り,マクロな現象として3通りのサイクルがあり,これらのそれぞれのパスを考慮しない解析を行い,各連成効果サイクルの影響度を評価した。また,溶接条件パラメータへの依存性を求め,連成効果確認実験として適切な条件設定を行った。 (2) ミクロ接触電気抵抗解析機能を有するマルチスケール解析コードの開発:ミクロ解析では,鋼板-鋼板間,電極-鋼板間の接触面に生じる接触電気抵抗を,レーザ顕微鏡画像をもとに作成された3次元ミクロモデルの熱弾塑性・大変形・接触解析から求めた。マクロ連成解析もミクロ解析もいずれも強い非線形性を有するため,マクロ接触面の数値積分点ごとにRVE サイズのミクロモデルを作成し,反復によってマルチスケール解析を行う機能を持たせ,大規模非線形マルチスケール解析とした。 (3) 連成効果検証溶接実験の準備および測定方法試験:溶接実験に使用する抵抗スポット溶接機の動作確認および電流,加圧力測定器等の較正を行った。さらに,表面温度分布の変化は高温用放射温度計を使用するため,溶接テストを行い,コード検証に必要なデータが取得できるよう,調整・確認を行なった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既開発の電流-熱-接触変形連成解析コードによる予備解析を行い,連成効果の影響度,パラメータ依存性を評価し,検証実験の条件設定を予定通り実施できた。並行して,ミクロ接触電気抵抗解析機能を有するマルチスケール解析コードの開発もほぼ終了し,溶接実験と温度測定系の準備も実施した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,まず,抵抗スポット溶接時に生じる連成効果について,実験結果と前年度に開発した電流-熱-接触変形-ミクロ接触電気抵抗(マルチスケール)連成解析コードの比較・検証を行い,これを用いて連成解析により連成現象の支配因子を特定する。 (1) 連成効果確認実験と連成解析コードの検証 前年度に設定した連成効果確認実験条件のもとで実験を行い,電流-熱-接触変形-ミクロ接触電気抵抗連成解析コードを検証する。連成効果が典型的に生じる部位,時刻とその前後で溶接条件パラメータを変化させて,依存関係を比較する。 (2) 電流-熱-接触変形-ミクロ接触電気抵抗連成解析による支配因子の決定 連成効果サイクルとして。当初の9通りにさらに新しい候補を追加して,各サイクルの影響度,パラメータ依存性について検討する。特に,接触域の移動,電流経路の移動,発熱部・高温部の広がり,温度依存物性値の分布,物性値温度依存性の効き方,影響度時刻歴グラフなどをもとに,抵抗スポット溶接中に生じている連成現象の支配因子を特定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
連成効果検証溶接実験の準備および測定方法試験の一部において,表面温度分布測定によるコード検証データの取得位置に関して,当初計画していた箇所では十分な精度が得られない可能性が生じた。このため,解析コードに新たに温度出力を追加する機能を加え,より精度の高い検証を行うこととした。このため,一部の比較検証実験を次年度の初めに持ち越して追加実施することとした。
|
次年度使用額の使用計画 |
前年度から持ち越した表面温度比較検証実験の一部において,試験片材料費,加工費として繰り越した費用を使用する。
|