BCC金属中の転位の特徴的な動き(温度依存性および転位線の方位依存性)を調べるために、分子動力学シミュレーションの解析モデルとして使用可能な任意の転位(刃状、らせんおよび混合転位)を含む原子モデルの作成方法を作成し、任意の転位の移動速度の温度依存性および転位線の方位依存性を調べることを可能にした。このモデルを用いて、任意の転位の転位芯構造を調べた結果、転位線方向に沿ってキンクを潜在的に含むジグザグ形状を有する転位と、キンクを含まない直線形状を有する転位があることがわかった。また、有限温度およびせん断応力下での転位の移動速度を調べたところ、直線形状の転位はモビリティーが非常に低いことがわかり、さらにキンク対を形成して移動することがわかった。キンク対を形成し、熱活性化過程により運動する転位について、キンク対の形成エネルギを計算した。その結果、らせん転位における活性化エネルギは高く、その他の転位においては低いことがわかった。すなわち、ある温度以上になるとらせん転位以外の転位は熱活性化を必要とせず非熱的に運動することが示唆された。分子動力学法により取得したモビリティーの情報を転位動力学法に実装することによって、BCC金属の塑性変形における温度依存性を調べることを可能にした。らせん転位の運動については既存の研究成果を実装した。その結果、温度を変化させることにより、変形応力が低下する傾向を確認することができた。また、本モビリティーのモデルは転位線の方位依存性も考慮しているため、すべての転位のモビリティーを同値とした従来型の転位動力学法と結果を比較したところ、優位な差を見ることができ、本モデルの重要性を確認することができた。さらにスピノーダル分解した金属組織中の転位挙動の解析に本転位動力学を適用し、スピノダール分解の周期、大きさによる臨界分解せん断応力への影響をまとめることに成功した。
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