研究課題/領域番号 |
16K05047
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
善甫 康成 法政大学, 情報科学部, 教授 (60557859)
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研究分担者 |
狩野 覚 法政大学, 情報科学部, 教授 (30107700)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 粒子法 / SPH / 電子状態計算 / Bohm形式 / 時間発展 |
研究実績の概要 |
粒子法を用いると計算点の配置に制約がない。この点に注目して電子状態計算に適用することが研究課題の特徴である。特に粒子法の特徴を生かすよう電子状態の動的な変化の算出が可能な形にしなければならない。粒子の配置の決定法について精度を維持しつつ、有効に算出できる手法の検討を行うことがこの研究の主目的である。 このため2017年度までに、1次元の解析が可能なHEMTデバイスの解析成果から得られた知見を用い、電子状態解析の特徴がでる二重スリットを通過する電子波束の干渉について動的な解析を実施した。この解析に粒子法を用い、計算点(粒子)の配置とその精度および効果について見極めを中心に行った。我々が目指している電子状態の時間的な変化をとらえるために、時間依存の波動方程式を、Bohm形式を用いて解くこととした。これは波束の動的な特性を軌跡データの解析から求める手法として知られており、我々が用いている粒子法との相性が非常に良い。粒子法では計算点である粒子の配置が精度を決めるため、計算点が過度に集中する場合あるいは疎になる場合、精度が低下してしまうという欠点がある。この対策として、計算点間隔が広い場合や極めて狭い場合に新しい計算点の追加や計算点の消去を行うという手法を考案した。計算領域に計算点を均等に配置する必要はなく、電子状態に合わせ高精度な計算が必要な領域へ集中的に粒子を配置することで効率的な計算を行うことができるという粒子法の特徴を活かしている。 また、基底状態も虚数時間を使う時間発展の手法を用いることで効率的に計算可能であることがわかり、上記手法と組合せ効率的な解析の推進が大いに期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度計画にそって、小規模サイズでの基本アイデアの試行と計算精度の見極め、基本アイデアを生かすためのプログラムの設計、更に計算精度の確認をしつつ基本的なプログラムを作成することができたが、本来の目的である実時間実空間の時間依存密度汎関数法へ粒子法を適用したコードに仕上げるには、必要な変更箇所が非常に多いことと各変更箇所での動作確認に予想以上に時間がかかることが判明し、その結果、当初計画と比較して若干の遅れが発生しているためである。今後、動的双極子モーメントの計算とそれに合致した動的な粒子配置の検討を進めていく必要がある。また光学スペクトルへの対応は2018年度の課題となる。一方、粒子法に基づいて重要な波動関数の勾配の計算やラプラシアンの計算については、2016年度smoothing lengthに関する検討を十分に行ったため、任意配置でもある程度の精度を維持しつつ、算出できることが分かっている。これは1次元、2次元および3次元にて確認済みであり、研究の進展は順調に推移すると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度および次年度にて非常に単純な系での電子状態計算での検討を行うことを通して、粒子法を用いた電子状態計算の基本的な特性に関して十分な知見を得ることができた。またBohm形式を用いることで電子状態の時間発展解析と最適な形で解析できる準備が整ったと考えている。 今後は計画通り、過年度までに確認された手法および仕様に基づく高効率プログラムを実装し、初期プログラム最適化および並列化および実時間実空間の時間依存密度汎関数法への適用により粒子法の特性を生かした計算を実施する予定である。実空間解析では粒子法の特徴を生かす解析が可能であるので、当初の基本設計指針に基づき、現在のベースプログラムを改良し実解析が可能な状況に仕上げていく。もちろんプログラムの構造とハードウエアのアーキテクチャに合わせ、効率的に計算を進めるための並列化等をすすめる。またベースプログラムを生かし、実時間実空間の時間依存密度汎関数法への適用を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 主に消耗品の購入時期のずれが原因である。 (使用計画) 今年度購入予定の消耗品を次年度に購入し、計画的に使用することにより差額の発生を抑えることに努める。
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