研究課題/領域番号 |
16K05054
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
飛田 明彦 埼玉大学, 教育学部, 教授 (50272274)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有限群 / 有限群のコホモロジー / 有限群の表現 / 有限群の分類空間 / 両側 Burnside 環 / stable splitting / 有限群の既約指標 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、有限群の分類空間の、安定分解をはじめとするホモトピー的な性質について、有限群のコホモロジーや有限群の表現を通して調べることである。有限群の両側 Burnside 多元環のコホモロジーへの作用を調べ、両側関手の理論を応用することにより研究を行った。 有限群の両側 Burnside 環は、部分群間の準同型写像や、外部自己同型群の情報を含み、群の構造と密接な関わりを持つ多元環である。圏論的な立場からは、この多元環は両側関手圏の各対象の自己準同型環となり、両側 Burnside 環の表現論には両側関手の理論を用いることができる。この両側 Burnside多元環は、自然に分類空間やコホモロジーに作用する。本研究では両側 Burnside 多元環のコホモロジーへの作用の解析を通して、分類空間の安定分解とその因子のコホモロジーを調べてきた。過去の研究においては、位数が奇素数 p の 3 乗で exponent が p である非可換有限 p-群を主な対象として、詳細な分析を行った。また、その情報を基にして、5以上の素数 p に対し、階数が 2 の p-群についてその分類空間の安定分解と安定分解因子のコホモロジーを調べてきたが、今年度の研究により、これらの群に関する安定分解の因子と重複度がすべて決定された。個別の群についての結果だけでは無く、これらの群全体の間の関係についても考察を行うことができた。コホモロジーについては冪零部分の解析も行い、さらに、Chow 環に関する結果を得た。 また、これらに加えて、有限群の表現自身についての研究も行った。既約表現の次数と共役類に関する研究を行い、対称群や p-群に関する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、階数が 2 の 有限 p-群の分類空間の安定分解に関する研究と、有限群の既約指標と共役類に関する研究の2点を行い、一定の成果を得ることができたと考えている。以下に内容の詳細を記す。 まず、階数が 2 の p-群の分類空間の安定分解に関する研究について内容を述べる。研究実績の概要欄において述べたように、5 以上の奇素数 p に対して、階数が 2 である有限 p-群の分類空間の安定分解を、両側 Burnside 環のコホモロジーへの作用を通して解析した。結果は、前年度までに得られた位数が p の3 乗で exponent が p である extra special 群 E についての先行研究を基にして記述される。このような階数 2 の群は metacyclic 群と他に2つの系列に分類されるが、それぞれについて分類空間の安定分解因子と重複度を決定した。これは既知の Dietz、Priddy 等による結果を含んでいる。また、群 E のコホモロジーとの関わりについて最終的に次の定理を得た。整係数コホモロジー環を法 p で考えたものの、冪零イデアルによる剰余環を H(P) とおく。 (定理) 上記で考察している階数 2 の非可換 p-群 P について、H(E) の次数付き部分加群 HS(P) があり、群 P の両側 Burnside 環の任意の原始的冪等元 e に対して、 E の両側 Burnside 環の冪等元 f が存在し、eH(P) は HS(P) と fH(E) の共通部分として得られる。 次に、有限群の既約指標と共役類に関する研究について述べる。有限群の共役類の大きさの積と指標の次数の積との比について考察し、対称群・交代群や有限 p-群に関する結果を得た。対称群と交代群に対しては、この比は整数であることを証明し、対称群の場合には簡明な記述があることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、両側 Burnside 多元環の表現とコホモロジー環への作用、分類空間の安定分解と安定因子のコホモロジーについて研究を行った。今後の計画としては、コホモロジー環の両側 Burnside 多元環上の加群としての構造についてさらに解析を行うこと、そしてそれにより分類空間の安定分解やホモトピー的性質をさらに深く理解することである。 階数が 2 の p-群の安定分解と因子のコホモロジーについての結果を得たが、階数が 2 の p-群全体の状況を把握し理解するために、圏論的な見地から検討を行う必要がある。本年度の研究により、位数 p の 3 乗の extra special 群 E を基盤としてすべての場合が統一的に記述できる可能性が見込まれる。その実現のために、圏論的方法と両側関手の理論を活用して、階数 2 のp-両側集合圏の記述を目指す。また、E の両側 Burnside 多元環を適正に変形した、階数 2 の p-群に対応する普遍的両側 Burnside 多元環の構成の可能性を模索したい。 さらに、階数が 2 より大きい群について同様の研究を推進するために、階数が大きい extra special p-群等を対象として、両側 Burnside 環のコホモロジーへの作用の解析を行う。 一方、有限群の表現に関する種々の情報も必要となる。実績概要で述べたように、本年度は有限群の表現について既約指標の次数と共役類の関係について研究を行った。この方面についての研究を推進するため、やはり有限 p-群に関する様々な考察を行う。既約指標の次数については様々な先行結果が知られているが、未解明の部分も多い。コホモロジーとの関わりも含め、中心拡大と共役類や指標の状況について、詳細な分析を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由は、研究集会における講演者旅費等に関して当初の予定よりも必要額が少なくなったことと、図書の購入について出版時期の遅れのため購入できないものが生じたことである。使用計画はについては、30年度に実施する研究集会(RIMS 共同研究(公開型)「有限群のコホモロジー論とその周辺」)における講演者旅費等に使用し、また情報収集のため図書の購入にあてる予定である。
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