研究実績の概要 |
(1) Shimuraは1変数保型形式の半整数の重さを持つ尖点型式のlifting の研究を行った.またHilbert 尖点形式についてもShimuraはそのFourier係数に注目したliftingの研究を行っている.当研究においては,レベルを16の倍数で重さが5/2以上の半整数のHilbert 保型形式(尖点形式に限らない)がliftできることを示し,Fourier係数の対応を具体的に記述した.また重さやレベルがもっと小さいときもliftが可能な場合があり特にtheta級数の3乗はliftが可能であることを示した.その応用としてルート2を含む2次体Kにおいて代数的整数が3つの平方数の和の書ける必要十分条件を求め,さらにその表現数とKの総虚2次拡大体の相対類数の関係式も求めた. (2) ふたつの1変数の,指標を持つ同じ重さの保型形式f,gにおいて,fのn番目のFourier係数のおよびgのn番目のFourier係数の複素共役の積にn^{-s}を掛けて,さらにそれらのn=1,2,3,…についての和を取ったL関数を L(s;f,g)とする.f,gの少なくとも一方が尖点形式ならば,L(s;f,g)はsについて全平面に解析接続を持つことは古典的に知られていた.1981年にZagierは群がSL(2,Z)で重さが自然数の場合にf,gが尖点形式でなくても同様のことが成り立ち,sのある点での留数がf,gのPetersson内積と関係することを示した.さらに関数等式も示している.当研究では群がレベルNの場合,半整数の重さの場合も含み,保型形式f,gの重さが異なっても,また指標が異なってもL関数L(s;f,g)はs について全複素平面に解析接続ができること,また関数等式を持つことを示した.応用として尖点形式でない保型形式の係数の増大に関する結果などを得ている.
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