研究実績の概要 |
有限群Gの位数を割りきる素数の集合をπとする。πの部分集合π1とπ2に対し,"πi" -正則元の集まりをG_iとする。GのG_i上の類関数全体のなす代数をR_i (G),Gの類関数全体のなす代数をR(G)とおく。R_i (G)は|π_i |=1の場合のπ_i-Brauer指標環の類似である。部分群束・素数グラフの視点から二つの代数R_i (G) (i=1,2)の関係を明らかにすることが本研究の主たる目的である。有限群Gの部分群束L(G)をクイバーとみなしその表現としてGの部分群HにR_i (H)(またはR(G))を対応させ,定義域の制限写像を矢と考える。注目する点として,各R_i (H)から単位元(または、正則表現の制限,この場合は誘導写像で矢を定義する)を対応させることにより自然に部分群束L(G)を復元させることができる事実がある。前年度までの研究の成果として,クイバーL(G)を用いてR_i (G) (i=1,2)間の関係を明らかにする写像及びそれらを用いてCartan行列の一般化した行列の概念を得ている。上記の理由によりこの一般化されたCartan行列の研究により, π_i-"部分群束" L_(π_i ) (G)(i=1,2)の構造の関係解明が期待できる。有限群論では、p-部分群束とp'-部分群束との関係を調べることはSignalizer functorなどの様に伝統的な重要な問題である。よってこの方面での応用も期待できると考えている。2018年度の研究においては,前年度までの研究成果の整理・精密化を行うとともに|π_i |=1 (i=1,2)の場合について,すなわちp-Brauer指標環とq-Brauer指標環の間の一般化Cartan行列の基本的な観察を行った。この観察によって一般化Cartan行列の行列成分についていくつかの性質を見出すことができたが、これについて次年度の研究期間にまとめ公表する予定である。
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