研究課題/領域番号 |
16K05066
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
千吉良 直紀 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (40292073)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 有限単純群 / 格子 / 可換代数 |
研究実績の概要 |
本研究では、置換群の部分群の固定点の集合、行列群の部分群の固定部分空間を用いた群の構造の研究、群の性質を反映する格子の研究、群の作用する可換代数構造の構成を通して群の性質の研究を行っている。本年度は、以下のような結果を得た。 1.群が作用する空間を置換表現から構成し、その中の格子を用いることで、群の作用および群の作用を見出すために良い基底を見つけることができることがわかった。その手法を用いていくつかの群でよい自己同型群を持つ格子を構成することができることがわかった。 2.1の方法を用いてJ_2, 3S_7の作用する既約空間を格子をとらえ、それを用いて可換非結合代数の積構造を決定した。また、(2^6:(S_3×L_2(7))についても同様の方法で積構造が決まることが分かった。 3.3S_7が作用する12次元の可換非結合代数については積構造がヘキサコードと呼ばれる4元体上の符号を用いて記述できることがわかった。ヘキサコードは散在型単純群の研究でよく用いられるよい性質をもった符号である。このような組合せ構造との関係が明らかとなったので、可換代数構造がよい性質を持っていることが予想される。さらに自己同型群として3S_7がどのように作用するかを可換代数の積により記述することができた。全自己同型群を決定するうえで重要であると思われる。 4.M_{11}の作用する3元体上の符号でよい性質をもつものがあることがわかった。この符号の特徴づけも今後継続して行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
J_2の可換非結合代数の積構造を決定することができた。次の段階として、可換代数の自己同型群の決定のため、扱いやすい小さい群の研究の必要性があった。その例として、3S_7の状況を調べた。この可換代数構造とヘキサコードというよく知られている組合せ構造との関係性は予想していなかったような良い結果であると思われる。このようにある種の良い組合せ構造も視野に入れて可換代数構造を見ることが重要であることが分かってきたことは大きな進展である。さらに研究を進めて自己同型群を決定するために必要な理論の構築を目指すことが重要であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
3S_7の作用する可換代数構造の全自己同型群を決定することをまず目標とする。この群は3互換群と呼ばれる群の1つでよく研究されている重要な群である。次元が12次元で小さいのと、ヘキサコードと関連して記述ができるため、扱いやすいと思われる。この群の研究を通じてどのように自己同型群を決定すればよいかについて研究を行う。J_2あるいはほかの群が作用する可換非結合代数の構造と関係を持つ組合せ構造や格子などの構造を見出し、関係性を探ることで群の自然な作用と群の部分群構造等群論的な性質をみいだすことを中心に研究を行う。 また、マシュー群M_11が作用する符号の特徴づけも並行して行う。こちらも群の作用する構造が見えるような特徴づけを行う。
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