研究課題/領域番号 |
16K05068
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
石川 雅雄 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (40243373)
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研究分担者 |
岡田 聡一 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (20224016)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | パフィアン / 行列式 / 交代符号行列 / 平面分割 / 半順序集合 / タイリング / 分配束 / MacNeille completion |
研究実績の概要 |
交代符号行列及び自己対称性をもつ平面分割についての研究が進んだ。 2016年には京大で開催された JCCA の国際会議、バンクーバーで開催された形式的冪級数と代数的組合せ論に関する国際会議、北海道大学で開催された Summer Conference on Hyperplane Arrangements(SCHA) in Sapporo、オーストリアで開催された Seminaire Lotharingien de Combinatoire、沖縄で開かれた表現論シンポジウムなど多くの研究集会に参加し、情報交換を行うと共に研究発表も行った。また、2017年には、引き続き3月にフランスのアルザスで開催された Seminaire Lotharingien de Combinatoire (Thibon Festa) に参加して、多くの有意義な講演を聴くことができた。5月にはリヨン大学の Frederic Jouhet が来日して、共同研究を行い、Richard Stanley も岡山大学を訪問した。7月にはロンドンの Queen Mary University of London で開催された形式的冪級数と代数的組合せ論に関する国際会議に参加し、10月にはイタリアのボローニャで開催された 第79回 Seminaire Lotharingien de Combinatoire に参加した。もっとも有意義だったのは 2018 年2月に岡山大学で開催された代数的&数上げ組合せ論の研究集会で内外から最新の研究についての招待講演者を招いて研究集会が開催された。特に、交代符号行列に関する Roger Behrend の講演と Mihai Ciucu の Lozenge tilings の講演は、その後の研究について有意義だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タイリングの問題については、進展があった。domino tiling についてアステカダイアモンドを拡張したアステカ長方形について穴を直線的に開けた場合に、この領域の domino tiling の個数を穴の座標の超幾何函数の行列式で書いた。また、この中で、180度回転対称な domino tiling の個数について考察した。domino tiling に対して Schoder path が定まり、Gessel-Viennot の lattice path method を使い Schroder number の行列式の和に持って行く。和になるのは、終点の取り方が穴によって複数生じるからである。ただ、行列式の中身が Schroder number を拡張したものであり、超幾何函数であるために変形が難しい。隣接関係式を利用して行列の基本変形を行う計算は非常に長くなる。最後に穴の開いた領域に90度回転で不変な domino tiling の置き方の個数も数えた。これは、穴のない場合は、QTASM (90度回転で不変な交代符号行列) の個数と密接に関係している。しかし、この場合は複数の穴を任意の場所に開けると個数は汚い数になる。中心線に1カ所を開ける場合は、綺麗な予想が出来ることを Kasteleyn の方法を使って確かめたが、Kasteleyn 行列の計算は固有値等の値がわかる場合でなければ計算が難しい。lattice path method によって計算する方法を考察中である。また、この場合は、最も一般的な予想を作ることも必要である。 2018 年度は、学科長であったので改組の問題や、その他にも MJOU や数理科学教育のためのクライアント/サーバシステムの仕様策定等の為に多くの時間が割かれ出張も出来ずに余り進まなかった。特に研究結果をまとめる時間がなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2018 年の2月に岡山大学で開催した AECO (Algebraic Combinatorics in Okayama) は、Roger Behrend, Mihai Ciucu, Greta Panova, Jang Soo Kim, 名古屋大の岡田聡一氏、京都大の神尾k修平氏等を招いて、たいへん興味深い話が聴け、刺激になり有意義だった。特に、交代符号行列の新しいクラスや skew hook formula、また、タイリングなどのいくつかのテーマについて理解が深まった。タイリングについては、今までの結果をまとめる必要がある。また、その後、刺激を受けて交代符号行列の種々のクラスを発生する Maple プログラムを作成し、かなり大きいものまで計算して、母関数を計算した。これらの母関数の間には不思議な関係があり、一部は six vertex model で説明できるが、説明できない偶然と思えない関係がある。Tom Roby 氏の来日や津田塾大の貞廣氏の紹介により、交代符号行列は半順序集合の otder ideal 全体として実現する方法が知られ、この半順序集合は RC-poset であり、Rowmotion や Promotion が重要な役割を持つことを知った。これは、主に Jessica Striker による仕事であり、 Fully Packed Loop との関係等の興味深い結果が得られている。現在、この手法を他の交代符号行列にも拡張できないか研究中である。それは、交代符号行列とその重み函数の間の全単射を使い、重み函数の大小関係(包含関係)で順序を定義することによって分配束と見ることである。この方法は具体的に join-irreducible な元の集合を求められ有望である。また、重み函数はアステカダイアモンドと関係しており、興味深い研究対象である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018 年度は学科長であった為に研究遂行に必要な出張ができなかった。また、共同研究者との研究を十分に行う時間がなかった。残った旅費はリヨン大学の Jiang Zeng 氏とのセルバーグ型のパフィアンについての共同研究に使う予定である。これは多変数の直交多項式とパフィアンの評価を結びつけるたいへん興味深い研究である。香港で行われた直交多項式の研究集会で Jiang Zeng 氏が研究発表を行ったことから始まった。それによって大変興味深いコメントがあり、Hyperpfaffian を De Bruijn の公式を使ってセルバーグ型の q-integral に結び付ける。これによって、直交多項式のモーメントを成分にするパファインの計算を行う。q-analogue も考えられており、Askey-Habsieger の q-analogue や Baker-Forrester の多変数 Al-Salam & Carlitz polynomial 等も関係している。 2018 年度はフランスに渡航し、Jiang Zeng 氏と共同研究をすることができなかった。他にも仕事が忙しくて、必要なノートパソコンを購入する時間もなかった。
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