オリジナルのベッヘラー予想 (Boecherer's conjecture) を証明した、森本和輝(神戸大学)との共著論文は、無事にJournal of the European Mathematical Societyに掲載が決定した。我々は、トーラス上の指標が自明でない場合へのベッヘラー予想の一般化についての共同研究を引き続き遂行した。オリジナルのベッヘラー予想の証明と、テータ対応を用いるところは共通であるが、異なる状況でそれを用いる証明に成功した。副産物として、ユニタリ群のある場合に関する精密化されたGan-Gross-Prasad予想をある仮定のもとに証明することもできることがわかった。この結果自体も興味深いものであると思う。これらは、主に森本の精力的な研究によって実現された。論文の初稿は完成したが、それを投稿できる状態にまで磨き上げ、できるだけ早く出版することが、目下の急務である。 2019年9月にドイツのダルムシュタット (Darmstadt) において開催された国際研究集会において、ベッヘラー予想の証明についての講演を行った。多くの聴衆に関心を持ってもらったと自負している。また、この研究集会においては、オクラホマ大学のピターレ (Ameya Pitale) とクイーン・マリー大学のサハ (Abhishek Saha)が共同で講演したが、講演内容には、我々の結果の興味深い応用が含まれていた。 ベッヘラー予想及びその一般化は、保型L函数の中心特殊値とジーゲル保型形式のフーリエ係数のある有限和を結びつけるものであり、今後、数論において、多方面への応用が期待される。
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