研究課題/領域番号 |
16K05070
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
西山 享 青山学院大学, 理工学部, 教授 (70183085)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多重旗多様体 / exotic 冪零多様体 / モーメント写像 / 退化主系列表現 / グラスマン多様体 / ホロノミー図形 / enhanced 隨伴作用 / Riesz超関数 |
研究実績の概要 |
シンプレクティック群 G とその対称部分群である一般線型群 H を考える.2017年度は,G の等方的旗多様体と H の極大放物型部分群による旗多様体(グラスマン多様体)の直積である二重旗多様体 X を多角的に研究した. X には自然に概均質ベクトル空間が付隨するが,その基本相対不変式の冪積を核とする積分核作用素 K によって,退化主系列表現の間の intertwining 作用素が得られることが前年度の研究によって判明した.今年度,それを論文の形にまとめて専門誌に発表した.その後,さらに研究を進め,積分核作用素 K が2つの複素パラメータに関して,全平面に有理型に解析接続できることを示し,そのガンマ因子を決定した.したがって,K は極において留数を持つが,それらも intertwining 作用素であり,留数の具体的な形を求めるため,積分核作用素 K のフーリエ変換の計算を行う必要がある.以上は,国内では和地輝仁氏,海外では,6月のクロアチアでの集会や8月のデンマーク訪問の際に Bent Orsted 教授や Genkai Zhang 教授との討論・研究連絡によって行われた. 積分核作用素 K は,実数体上における計算・研究であった.それとは別に,複素数体上の概均質ベクトル空間としての視点から, b 関数やホロノミー図形の決定も行った.これは和地輝仁氏との共同研究に基づく.基本相対不変式が1つの場合には研究が多数あるが,2つの場合にはあまり例がなく,先駆的な研究と言える.しかし,同時に状況は大変複雑であり,まとまった結果には到達していない. なお,似た方向の研究として,太田琢也氏と共に,隨伴作用の拡張である enhanced adjoint 作用に関して不変式論の観点から研究を行った.結果は論文にまとめて,10月の研究集会で発表した.論文は投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに述べたように,退化主系列表現の間の intertwining 作用素としての積分核作用素 K については,解析接続を始め,フーリエ変換についても研究中であり,研究は予定通り滞りなく行われている.実績の報告でも述べたように,基本相対不変式を複数用いる積分核作用素や b-関数の計算・研究はあまり例がなく,具体的な計算を多数行う必要があるため時間がかかっている.しかし,論文も発表されているし,別の方向ではあるが,拡張された隨伴作用と不変式論に関する論文も投稿中である.研究も順調に進んでおり,徐々にではあるが,結果も伴ってきている.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度,代表者は長期にわたって海外に滞在し,以下のように研究を行う予定である. まず,前年度より引き続いて2変数のパラメータを持つ積分核を用いて定義された intertwining 作用素 K の研究を行う.この積分核作用素のフーリエ変換は以後の研究において重要な鍵となると考えられるが,まず,作用素としてのフーリエ変換を決定し,留数の台である軌道や,留数を具体的に微分作用素として書くことなどに焦点を当てて研究を行う.これは Bent Orsted 教授との討論・研究連絡に基づくものである.その後,概均質空間と旗多様体に付隨した余法束多様体や exotic 冪零多様体の研究を Lucas Fresse 教授との討論・研究連絡を通して行う.exotic 冪零多様体の軌道を組合せ論的な観点から記述することが当面の目標である.8月・9月にはクロアチアを訪問し,ユニタリ最高ウェイト加群の Dirac コホモロジーに関する研究を行う. 年度の後半は,前半に得られた結果をまとめること,また,ゼータ積分と Knapp-Stein 型の intertwining 作用素との関係,それらを用いた微分作用素型の intertwining 作用素の導出など新しい研究にも取り組みたい.この研究は二重旗多様体の場合にも拡張できると考える.また,この時期に David Vogan 教授と討論・研究連絡を行って,コホモロジー的誘導表現や導来加群,その隨伴サイクルに関する研究を精査したい.これらは余次元1の連結性や前年度の研究のテーマでもあったホロノミー図形とも深い関わりを持っていると感じている.
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度の後半はおもに先行研究などの精査をする必要があり,その作業が終わるまでは,旅費,物品費などの支出が困難であった.また,研究発表の主体が招待講演であり,多額の援助を各研究機関から受け,当該研究課題の研究費を支出する必要が無かったことも理由の一つである.先行研究の精査はまだ終わっていないが,2018年度は成果発表などで研究費を十分に消化できると考えている.
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