研究課題/領域番号 |
16K05073
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
山内 博 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (40452213)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 頂点作用素代数 / 三互換群 / グライス代数 / ヴィラソロ代数 |
研究実績の概要 |
頂点作用素代数のグライス代数や共形デザインなどの部分構造が全体の代数構造にどのような制約を与えうるかを調べるため,群の作用と代数構造の対応が明確である,三互換群に付随する松尾代数をグライス代数に持つ頂点作用素代数の構造の特徴付けについて研究を行った。当初は対称群に付随する松尾代数をそのグライス代数に持つ,頂点作用素代数の系列について調べた。この頂点作用素代数の系列は abelian coset construction と呼ばれる手法により,アフィン頂点作用素代数においてハイゼンベルグ代数の交換団部分代数として構成されるものであるが,A 型のアフィン頂点作用素代数にこの手法を適用した場合には,そのグライス代数はイジング元で生成されており,対称群に付随する松尾代数の実現を与えている。そこで A 型の場合について,その生成元および頂点作用素代数構造の一意性について,上海交通大学の Cuipo Jiang 氏および台湾中央研究院の Ching Hung Lam 氏と共同で研究を進めた。当初は対称群に付随したもののみを扱っていたが,議論を精密化した結果,対称群に限らない,有限三互換群に付随した松尾代数をグライス代数に持つ頂点作用素代数について,その生成系および構造の一意性をほぼ証明することができたため,今後論文にまとめ,発表する予定である。 前述の頂点作用素代数の系列はすべて,局所的には 2A 型と呼ばれるイジング元の対により生成されており,研究代表者がこれまで研究を行ってきた,いわゆる枠付き頂点作用素代数の非可換版ともいえる構造を持っている。枠付き頂点作用素代数についてはその表現論および構造論は非常に明快であったが,前述の成果にもとづくことで,枠付き頂点作用素代数に類似する理論を,非可換な場合へと拡張できる可能性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
頂点作用素代数の構造論からのアプローチで研究を行い,松尾代数に付随するクラスについては,グライス代数による全体構造の特徴づけが与えられた。有限群に付随する松尾代数については跡を具体的に計算ができるため,ヴィラソロ元と共形デザイン構造との関係を調べる足がかりとなる結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
当年度に得られた知見にもとづいて,頂点作用素代数構造と共形デザイン構造の関係について研究を進める。共形デザイン構造からは二次のカシミール元に関する情報が得られ,それから頂点作用素代数上の相関関数に制約が入ることが先行研究により知られているが,高次の跡については明示的な表示が得られていないので,まずはこれを与えることを目標とし,さらに松尾代数が関連する場合に,跡公式と松尾代数のパラメーターとの関係を調べ,例外型頂点作用素代数の分類問題への応用を探る。 当年度の研究により枠付き頂点作用素代数の非可換化にあたるクラスが見出だせたので,こちらの研究も進める。このクラスは構造論的な研究により,グライス代数によって全体構造が規定されることが分かったので,今後は加群の分類と共役性について,表現論的手法も組み合わせて,代数構造の拡大の理論を整備するとともに,群作用の研究も行い,特に中心電荷が24となる場合について,ムーンシャイン頂点作用素代数への応用を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
代数処理用に計算機を購入するため,物品費を多めに計上したが,当年度は大学から研究室に配備されるパソコンが更新される年度であり,比較的計算能力の高いマシンが配備されたため,新規購入を見送り,その分の予算が繰り越された。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は夏期に長期海外出張を予定しており,そのための旅費として使用する予定である。
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