研究実績の概要 |
本研究では頂点作用素代数の構造論に立脚した対称性の研究を行った。本研究では頂点作用素代数はウエイト1の部分空間が自明となるOZ型に限って研究を行った。この場合,ウエイト2の部分空間には不変内積を持つ可換非結合代数の構造が自然に入る。これをOZ型頂点作用素代数のグライス代数という。頂点作用素代数は無限次元の代数系であるが,グライス代数は有限次元であり,頂点作用素代数の部分構造を取り出したものである。この部分構造を足がかりとするべく,群作用と代数構造の対応が明確である,松尾代数をグライス代数として持つ頂点作用素代数について,その部分構造が全体の代数構造をどのように制約しているか,研究を行った。
2016-2017年度において,Cuipo Jiang, Ching Hung Lam との共同研究でOZ型頂点作用素代数のうち,シグマ型イジング元で生成され,さらに単純という仮定の下で,そのような頂点作用素代数構造の一意性を証明した。2018年度はシグマ型イジング元で生成される頂点作用素代数の特徴づけについて,引き続きCuipo Jiang, Ching Hung Lam と研究を行った。シグマ型イジング元で生成されるOZ型頂点作用素代数はグライス代数の非退化性のみから全体の構造が一意に決まることの証明を試みた。昨年度までの研究から,松尾代数がA型のワイル群の場合には,グライス代数は自動的に非退化になり,頂点作用素代数も単純になることが証明されていたが,A型の場合の議論を一般化することにより,D型のワイル群に付随する場合にも,グライス代数の非退化性から,頂点作用素代数構造の単純性を証明することが出来た。AD型の無限系列が処理できたので,残りの有限個のケースについて,包含関係に関する帰納法を用いることで,グライス代数による特徴づけを与えることが今後の課題である。
|