研究課題/領域番号 |
16K05078
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
野田 工 日本大学, 工学部, 准教授 (10350034)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゼータ関数 / ポアンカレ級数 / 母関数 / ハンケル型積分表示 |
研究実績の概要 |
古典的なモジュラー群SL(2,Z)上のPoincare級数を一重和に分解して現れるHurwitz-変形Lerch型ゼータ関数について考察し、この級数についてHankel型積分表示を導くことに成功した。ここでは指数関数を含むある種の関数の逆Laplace変換型積分表示を用いている。我々の得た積分表示はこのDirichlet級数の全複素平面への解析接続や関数関係式を与える。これらの結果は古典的なRiemannゼータ関数の積分表示、解析接続、関数等式のアナロジーとなっている。さらに我々の得た関数関係式からPoincare級数のFourier級数展開が自然に得られる。 上記の結果は我々が導入し基本性質を証明していたベッセル関数や合流型超幾何関数を係数に持つDirichlet級数(Besselゼータ関数、合流型超幾何ゼータ関数)と同様の手法により証明されたものである。証明においては、ある種の逆Laplace変換をFourier-Mellin積分で表示することが鍵となっている。今年度はこれらBesselゼータ関数、合流型超幾何ゼータ関数の負の整数点における特殊値についても計算をすすめ、Bernoulli数を用いた級数表示が可能であることを報告した。 いずれのケースにおいても我々が考察しているDirichlet級数はRiemannゼータ関数またはHurwitzゼータ関数の母関数となっている。特に最初の指数型ゼータ母関数とBesselゼータ関数は、モジュラー群SL(2,Z)上のPoincare級数に含有されていることに注意する。尖点形式に由来する新たなゼータ母関数を導入しその基本性質を我々は証明したことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに、Poincare級数を一重和に分解して現れるHurwitz-変形Lerch型ゼータ関数に対しHankel路積分表示を与え、解析接続、Hurwitzゼータ型の関数等式、Riemannゼータ関数の母関数表示等の基本性質を証明している。応用としてPoincare級数のFourier級数展開、および指数関数型Riemannゼータ母関数に対するVoronoi型和公式の新しい証明を導いた。さらにJ-Bessel・合流型超幾何ゼータ関数の特殊値をBernoulli数を含む級数で表示できることを証明した。
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今後の研究の推進方策 |
Poincare級数を一重和に分解して現れるHurwitz-変形Lerch型ゼータ関数と、古典的な指数型Riemannゼータ母関数の統一的な取り扱いを目指し、より一般的な指数型Riemannゼータ母関数の定義と積分表示、そこから従う関数関係式等を得ることを目標にする。特に我々の手法のカギである逆Laplace変換のFourier-Mellin積分表示およびHankel型積分表示の一般化が作業目標になる。 同時に超幾何関数群を係数にもつDirichlet級数に対しても前年度までの手法を踏襲しHankel路積分表示を与え、解析接続、関数関係式、ゼータ母関数表示等を示していく。この手法の一般化を精査し、ゼータ母関数群の構成手法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定より出張費を使用しなかったため次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度も研究計画の効果的な遂行のため、 i)定期的なセミナーを実施する; ii)国内外で開かれるシンポジウム・セミナーへの積極的な参加と意見・情報交換をおこなう; iii)各分野の専門家を招待または訪問し,研究集会の実施と参加を行うことが必要である。このため旅費、謝金として使用したい。また、研究計画の効果的な遂行のため、論文・プレプリントの収集と関係する図書の購入・充実を図りたい。このため図書、OA消耗品、印刷費等に研究経費を使用する予定である。
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