研究実績の概要 |
本報告者は逆Mellin変換されたモジュラー群上のPoincare級数のFourier級数の内部に新種のゼータ関数(J-Besselゼータ関数)を見出し,Hankel路積分表示,解析接続,変換公式,Riemannゼータ関数の母関数表示等の基本性質を証明していた。さらに類似の手法を用いて,合流型超幾何型ゼータ関数についても積分表示等の同様の性質を得ていた。本年度は,これらのゼータ関数と,桂田昌紀氏(1997年)によって定義されていた超幾何関数型のゼータ母関数との間に成り立つ関数関係式(Hurwitzゼータ型関数等式)を示した。さらに上記のJ-Besselゼータ関数について非正整数点における特殊値を,Bernoulli数を用いて級数表示し,いくつかの具体例を与えた。 一方で,正則Poincare級数を一重和に分解して現れるHurwitz-変形Lerch型ゼータ関数に対し,Hankel路積分表示を与え,解析接続,Hurwitzゼータ型の関数等式,Riemannゼータ関数の母関数表示等の基本性質を証明し報告した。応用としてPoincare級数のFourier級数展開,および指数関数型Riemannゼータ母関数に対するVoronoi型和公式の新しい証明を導いている。さらに非正則Poincare級数についても同様な考察を行い,ある種の非正則Poincare級数,ただし群の作用での関数関係式を保つが一般にラプラス作用素の固有関数ではなくL_2空間にも含まれないような変形型について,変形Poincare級数のFourier級数展開を導くDirichlet級数の積分表示と変換公式の結果を部分的に計算した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ベッセル関数や合流型超幾何関数を係数に持つゼータ母関数に用いた手法を踏襲した超幾何関数群を係数にもつDirichlet級数に対したHankel路積分表示,解析接続,関数関係式等が得られていない。また、モジュラー群上の正則Poincare級数に対して,指数型母関数の関数性質を用いた適用を証明したが,非正則Poincare級数への拡張が未完成である。
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今後の研究の推進方策 |
関数関係式を得る基本的な手法である,既知の特殊関数と単項の積のLaplace変換の適用を開発する。逆変換がBromwich積分表示され,それをHankel路積分にシフトできれば,前年度と同様の手法でゼータ関数の積分表示と関数関係式が求められる。特に非正則Poincare級数の場合を考察する。Laplace変換が未知の場合,特殊関数のBarnes型積分表示を手掛かりに逆変換を求めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度前期にセミナーや研究打ち合わせの出張を行う時間的余裕がなく,また学会への参加が公務に重なり困難であったため,出張旅費の消費が予定より少なかった。また,携帯型パソコンの購入を見送ったため次年度に使用額が生じた。 平成30年度は海外出張(ドイツ・マックスプランク研究所)とノートパソコンの購入(Panasonic・Let's note)に使用する予定である。
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