研究実績の概要 |
引き続き,$p$進体上のdivision quaternion$D$上のエルミート形式の空間$X$の研究を主に進めた.この空間に作用している群は$D$上の一般線形群$GL_n(D)$なので,これ自体の球関数は,佐武一郎氏の結果までさかのぼれて,Hall-Littlewood対称多項式(最も標準的なMacdonald対称多項式)によって記述されている.このquaternionエルミート形式の空間$X$についても,行列サイズが小さい空間上の球関数と関係式を与えられるので,$p$進体上のエルミート形式や対称形式などと同様に,球関数を局所密度の生成関数としてとらえらることができる. 球関数は空間のカルタン分解の代表元の値で決まり,明示式は,特定の点での球関数と対称多項式(サイズ$n$ならば$n$変数多項式)の積となる.後者が明示式の主要項で,新たなMacdonald対称多項式が現れる.この主要項を核関数とする球フーリエ変換で,$X$上の$K=GL_n(O_D)$-不変な急減少関数の空間$S(K \backslash X)$は,$n$変数対称ローラン多項式環の中に移される.サイズ 1,2のときは全射となる.サイズ 3,4のときには,像は真のイデアルで,その2個からなる生成元を与え,引き戻して,$S(K\backslash X)$のヘッケ環加群としての生成元を与え,さらに球関数のparametrizationもできた.生成元の計算には 計算ソフトMacaulay2が有益であったが,より大きなサイズではうまく機能しないようである.一般のサイズの場合の生成元と球関数のparametrizationに関しては,予想にとどまる. サイズ2のときには,連携研究者 小森靖氏の協力により,$S(K\backslash X)$の Plancherel公式ができた.
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