研究課題/領域番号 |
16K05082
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
大西 良博 名城大学, 理工学部, 教授 (60250643)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 代数曲線 / Jacobian varieties / sigma functions / Coble suface / Abelian functions |
研究実績の概要 |
(1) Sigma 函数を熱方程式で特徴づける Weierstrass の仕事を、種数の高い場合に一般化しつつある Buchstaber-Leykin の論文を元にして、実際にそれらの熱方程式が高い種数の sigma 函数を特徴付けることを証明すべく、J.C. Eilbeck 氏を名古屋に招き、隙のない 1 週間程度の共同研究を実施した。その結果、現在、第 1 段階の論文はほぼ完成し、間もなく投稿できる見込みである。 論文は 40 page 程度であるが、前半の 25 pages を Leykin の理論の厳密な基礎付けに費やしている。 原論文は看過できない誤りを多く含み、多くの主張に証明がつけられてゐないため、今回執筆した論文はこの方面の貴重な文献になる。 (2) さらに、高い種数の場合の sigma 函数の原点での冪級数展開が Hurwitz 整性を持つ事を証明した論文が Edinburgh 数学会の査読付き学術誌に掲載されることが決定した。これも、sigma 函数を数論に応用する際の基本的な道具になる結果である。 (3) また、数年前に支給を受けた科学研究費補助金により、種数 2 あるいは 3 の一般な非特異代数曲線 の rank 2 の vector bundles の moduli 空間を実現する Coble の超曲面を具体的に求めた。これは Weierstrass の楕円函数を 自然に拡張した Abel 函数を使つて記述してあり、非常に美しい式にまとめられる。この度、これを英文で論文としてまとめた。こちらもほぼ投稿できる段階に逹した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Sigma 函数の熱方程式についての Leykin らの結果をきちんと数学的に基礎付けて、実際に彼らの得た熱方程式が sigma 函数を特徴付けること、同時に、それらによつて sigma 函数の原点での冪級数展開が recursive に得られる事を詳しく論述した論文がほぼ完成した。ここまでの計算を得る為に J.C. Eilbeck 氏を日本に招聘し、1 週間程度の密度の高い共同研究を実施した。また、sigma 函数の冪級数展開が Hurwitz 整なる性質を持つ事の証明を与えた論文が、海外の著名な査読付き学術誌に掲載されることが決定した。これらは当初の計画の半分程に至るものなので、 「当初の計画以上に進展している」といへる。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」の (1) と (3) で述べた 2 本の論文を投稿する。 但し、それらの論文は Weierstrass form と呼ばれるものに限られてゐるため、さうでない一般な平面 telescopic 曲線に対して sigma 函数の熱方程式による特徴付けを与へることを目指す。種数 1 の場合はすでに完成してゐるので、これは恐らく成功すると確信してゐる。 昨年度中に発見した一般加法公式なるものについて、その証明をきちんと記述し、論文としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本計画の実施者が出張できず、訪問予定であつた J.C. Eilbeck 氏に来日してもらつたため。 また、その費用を、氏が当該の来日期間中に出席することになつた別の研究集会の主催者 (阪大の土井准教授)が出資したため。
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次年度使用額の使用計画 |
申請者の出張を計画中であるが、不可能である場合は再度 Eilbeck 氏の来日を打診する。
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