研究実績の概要 |
この期間(2018年度)、次のの2論文を発表した。 [1] On the kernel of the theta operator mod p, manuscripta math. [2] On the mod p kernel of the theta operator and Eisenstein series, Journal of Number Theory. これらの論文で、研究主題であった「素数pを法とするテータ作用素の性質」について、これまで懸案であった(i)奇数次数のジーゲル・モジュラー形式の場合のmod pテータ作用素の理論 (ii)カスプ形式でテータ作用素のmod p核に入るようなものの構成、の二点について、次の様な結果を与えた。[1]では、この研究の研究の発端となった「Igusaのカスプ形式がテータ作用素のmod 23核にはいる」という事実の成立理由の解明を行った。[2]では、これまで奇数次数のジーゲル・モジュラー形式と偶数次のエルミート・モジュラー形式でテータ作用素のmod p核に入るものの存在は知られていなかったが、このような保型形式の存在条件と具体的構成を行った。これらの結果は、テータ作用素のmod p核理論が単に単発的な理論ではないことを示している。これらの結果は、おもにアイゼンシュタイン級数とよばれる保型形式のフーリエ係数の算術的性質を使うものであるが、このほかに、二次形式に付随するテータ級数を用いる方法が考えられる。現在、すでにユニモジュラー格子に対するテータ級数について考察を行っている。具体的には、ニーマイヤー格子とよばれる階数24のユニモジュラー格子を考え、それに付随するテータ級数を考えると、上記「テータ作用素のmod p核にはいるジーゲル・モジュラー形式」が得られることを確認している。どのようなニーマイヤー格子に対して、どのような素数pがとれるか現在研究中である。
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