研究課題
多様体の上の滑らかでない点を特異点と呼ぶが,この特異点の特徴を捉えるためには良い不変数が必要になる.本研究ではMather-Jacobian log discrepancy (以後簡単のため MJ log discrepancy と呼ぶ) という不変数を導入しその性質を調べているが,この不変数は特異点の上の弧空間の言葉で言い換えができる.よく知られていることであるが,標数が0の基礎体の上の多様体の特異点は特異点解消を用いて非特異なものに帰着させることができる.しかし正標数の基礎体上の多様体については特異点解消の存在はまだ証明されていないので,その替わりとなる技術が必要になってくる.本研究では基礎体の標数にかかわりなくMJ log discrepancy が弧空間の言葉で言い換えられ,多様体の特異点と部分多様体の特異点の性質が密接に関わっていることを示す逆同伴公式も成立することを示した.これがいくつかの問題において特異点解消の代わりの役割を果たすことが期待される.実際 MJ log discrepancy の一様有限決定性が示されれば,特異点解消の存在が証明されていない正標数の場合でも,その下半連続性が得られ,また MJ log canonical singularities が開条件であること,小変形により安定であることも示される.今年まで得られている evidence としては,非退化超曲面特異点や2次元多様体の特異点の場合に MJ log discrepancy の一様有限決定性が示された.今後はこれが一般にも成立することを示すことが目標になる.
Valladolid大学のAna Reguera氏を東京女子大学に招聘し,minimal log discrepanciesの有限次決定性について議論した.その結果maximalなτ(タウ)不変数を持つ超曲面特異点の場合に有限次決定性が得られることがわかった.Utah大学のT.De Fernex, Illinois大学シカゴ校のL. Ein,Michigan大学のM.Mustata氏と議論した.
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