研究課題/領域番号 |
16K05090
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高木 寛通 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (30322150)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Q-Fano 3-fold / 慨del Pezzo 3-fold / モジュライの有理性 / theta characteristic |
研究実績の概要 |
本年度はUdine大学のFrancesco Zucconi氏と共同で研究をして次の結果を得た.種数2以上の超楕円的代数曲線とその上の1点,それから,その上のtheta characteristicで大域切断を持たないもの,という3つ組のモジュライ空間は有理多様体である. その手法は,ある種の3次元概del Pezzo多様体上の曲線族の代数群による商が上記の三つ組のモジュライ空間と双有理的同値であることを示し,前者の有理性を示すというものである.論文は現在投稿中である.
また,単独の研究として,特異点指数2のQ-Fano 3-foldのいくつかについて,それらを重完全交叉として含み,代数群の半等質的作用を持つQ-Fano多様体(鍵多様体と呼んでいる)の構成を行った.その手法は,まず,Q-Fano 3-foldのGorenstein modelを完全交叉として含む多様体を構成して,それを極小モデル理論の範疇にある具体的な双有理射で変換することで,望みの鍵多様体を構成するというものである.このような鍵多様体を用いて,指数が2以上のQ-Fano 3-foldが,その種数を固定したとき,鍵多様体における重完全交叉の退化を考えることで,系統的に構成ができるということを観察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Q-Fano 3-foldの鍵多様体の構成は,本研究課題の中心的テーマであり,これに関して順調に研究が進展し,これに関する研究発表を行うこともできた.また,特異点指数2の鍵多様体を用いて,特異点指数が2より大きいQ-Fano 3-foldについても理解することができるというのを見出したのは,意外な発見で興味深かった.次年度につながる研究ができ充実した一年であった.また,Zucconi氏との共同研究は,長年にわたって行っているが,これについて論文が執筆できたことにも満足している.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きQ-Fano 3-foldの鍵多様体の構成について精力的に研究したい.具体的には,できる限り多くのQ-Fano 3-foldに対して鍵多様体を構成すること,鍵多様体のモジュライ的な意味がないかを追求すること,鍵多様体を用いて,種数を固定したQ-Fano 3-foldたちの相互関係を系統的に理解すること,などやるべきことは多い.これらを順調に遂行することで,Q-Fano 3-foldの全体像,および,個々のQ-Fano 3-foldの個性のよりよい理解を目指したい.
また,Zucconi氏との共同研究「Fano多様体上の曲線の幾何学を,曲線とtheta characteristicの対のモジュライ空間の理解に応用する」も推進していきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
一つの理由は、当該科研費で共同研究者のZucconi氏と研究打ち合わせをするための海外出張をする予定であったが、それを前科研費「若手(B)」で賄ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
共同研究者のZucconi氏と研究打ち合わせをするための海外出張あるいはZucconi氏の日本への招へいなどを計画している。
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