研究実績の概要 |
高々終着特異点しか持たず反標準因子が豊富な3次元複素射影多様体をQ-Fano 3-foldと言う.その特別な場合である非特異なQ-Fano 3-fold(以下, 単にFano 3-foldという)の分類は完成しているばかりか,様々な視点を持っているため, Fano 3-foldの存在というものが際立ったものになっている.Q-Fano 3-foldの分類はいまだ完成には至っていないが,その分類がFano 3-fold同様, 様々な視点を持っているということがすでに垣間見えている.私は,近年の研究で,余次元4のprime Q-Fano 3-foldを組織的に構成する方法を発見した.特に,当該年度は,いわゆるType II_2 projectionしか持たないそのようなQ-Fano 3-foldで,存在が予想されていたものをすべて構成した.それは7種あるが,副産物として,射影を全く持たないそのようなQ-Fano 3-foldも1種構成できた.これについては,岡田拓三氏が,存在すれば双有理超剛性を持つということをすでに示していたので,新しい双有理超剛性を持つQ-Fano 3-foldが見つかったことになる.7+1種のQ-Fano 3-foldの構成の方法は,向井茂氏によるFano 3-foldの分類方法に触発されたもので,高次元の反標準因子が豊富な射影多様体Sでよいものを見つけ出し,その中でいくつかの因子の交わりとして,Q-Fano 3-foldXを実現する.SはXに応じて8種あるが,一つの14次元アフィン多様体Tの座標にXに適合するよう重みを付けて得られる.この研究成果は,論文としてまとめ,Arxivに投稿済みである.論文完成後,アフィン多様体Tの方程式が複雑なことが気にかかり,その良い解釈がないかを追求したところ,Jordan代数の変形との関連が分かり,現在研究を継続中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
余次元4のprime Q-Fano 3-foldについては,「その多くが9個の方程式を持ち,その方程式の関係式が16個の元で生成されていて,なおかつ,その方程式が,P^2×P^2またはP^1×P^1×P^1に関係している」と予想されている.さらに,それらの数値的データの可能性がBrown氏らによりリストアップされている.研究実績の概要で述べた私の当該年度の研究とその前年の研究,そして,私の研究に先行するCoughlan-Ducatの研究を合わせると,P^2×P^2に関係するものについては,リストアップされている数値的データすべてについて,Q-Fano 3-foldを構成できたことになる.さらに,未発表であるが、Coughlan-Ducatの研究を私自身の研究の流れの中で洗練させることもできた(それについては,次の今後の研究の推進方策でより詳しく述べる).いまだ、Q-Fano 3-foldの分類の完成には至っていないものの,近年の私の一連の研究は,分類の完成の過程の重要なステップと捉えられるので,目標に向けて,おおむね順調に研究が進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きQ-Fano 3-foldの分類の完成に向けて研究を継続していくが,まずは,余次元4のprime Q-Fano 3-foldの場合に分類を完成させることを中間目標とする.この目標について,今年度取り組む課題は2つある.1つは,上記でP^2×P^2に関係するprime Q-Fano 3-foldの例を構成したが,同様の例の構成をP^1×P^1×P^1に関係する場合に完成させることである.これについては,実はある程度,上記の研究と同時進行で行ってきた部分もあるので,完成の見込みが立っている.さらにCoughlan-Ducatによる先行研究もあるので,参考にできる.もう一つは,研究実績の概要で述べたprime Q-Fano 3-foldの構成のために発見したアフィン多様体Sについて,Jordan代数の変形との関連を突き詰めることである.実は,Jordan代数の変形との関連は,Sのみならず,他のP^2×P^2に関係するprime Q-Fano 3-foldについてもすでに分かっている(Ducat-Coughlanで扱われた場合も含めて).Jordan代数との関連を突き詰めておく一方で,さらに,余次元4のQ-Fano 3-foldから,Jordan代数との関連を読み取れるデータ(Q-Fano 3-fold上のなんらかの対象など)が発見できれば,余次元4のQ-Fano 3-foldの分類の完成に大きく近づく.
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