研究実績の概要 |
本課題の研究対象の一つとして,正標数の特異点または射影多様体が,局所的または大域的な有限F表現型(finite F-representation type,以下FFRTと略記)をもつ条件に関する考察がある.本年度においては,2次元正規次数環がFFRTを持つ条件について,大川領氏(京都大数理解析研究所研究員)と共同で研究した. R を正標数 p の体上の2次元正規次数環とする.R は非特異射影曲線 C=Proj R 上の豊富な有理係数因子 D に付随した次数環としてR=R(C,D) と表される.D が整因子であれは,R のFrobenius直像は C 上の直線束 O_C(iD) のFrobenius直像を用いて表されるが,D の係数が整数でない場合には,その処理が障害となる.そこで,C を粗モジュライ空間にもつある種のDeligne-Mumfordスタック X で,粗モジュライ射 π: X → C による D の引き戻しが整Cartier因子になるものを用いて R のFFRT性を研究した.得られた結果は以下の通りである. 定理 R=R(C,D) が対数的端末特異点をもたず,有理係数因子 D の各係数の分母が標数 p で割り切れないとき,R はFFRTをもたない. この結果から,環 R=k[x,y,z]/(x2+y3+z7) はいつFFRTをもつか?, というH. Brennerの問に対する答は,RがFFRTをもつのは,p=2,3,7 の場合のみであることがわかる. 以上の結果は,大川氏との共著論文 "Frobenius push-forwards on weighted projective lines and the FFRT properties of surface singularities" として準備中である.
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