研究実績の概要 |
前年度までの研究において,奇標数の 5次 del Pezzo 曲面の上のある Frobenius 直像について予想を立てたが,本年度においては,この予想を証明した.得られた結果は以下の通りである. 定理. X を奇標数 p の代数閉体上の非特異 5次 del Pezzo 曲面とし,X の反標準直線束を L = O_X(-K_X) とする.非負整数 i, e について,i ≦ q = (p^e-1)/2 が成り立つとき,L^i = O_X(-iK_X) の e次 Frobenius 直像 (F^e)_*(L^i) について,次が成り立つ. (1) (F^e)_*(L^i) は階数 dim H^0(X,L^i) = 5i(i+1)/2+1 の自由層を直和因子にもつ. (2) i=(p^e-1)/2 のとき,(F^e)_*(L^i) は,階数 (5q^2+3)/8 の自由層と,(q^2-1)/8個の階数 3 の直既約ベクトル束 E_{1,1,1/2} の直和に分解する.ここに,E_{1,1,1/2} は,直既約性とある開集合上の分裂条件から唯一つに決定される階数 3 の自己双対的ベクトル束である. この定理の証明においては,二項係数の 4重積の和を成分とするある (q^2-1)/8 次正方行列が法 p の下で正則であることを示す必要があり,この「初等的」な部分が難所となっていたが,整数値多項式を用いた議論によりこれを解決することができた.応用として,奇標数の非特異 5次 del Pezzo 曲面の反標準環 R=R(X,-K_X) の F-符号数(F-signature)が,5/24 であることを示した.
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