研究実績の概要 |
本年度は,正標数の 5次 del Pezzo 曲面 X の反標準環の FFRT 性に関連して,標数 p=2, 3 の場合に,反標準束 L=-K_X の n 重テンソル積のフロベニウス直像 F^e_*(L^n) の構造を研究し,n が 0 以上 (p^e-1)/2 以下の範囲にある場合のフロベニウス直像は,以下の直既約ベクトル束の直和になることを示した.ただし,X を射影平面の4点爆発として実現するときの例外曲線を E_i (i=1,2,3,4), E=E_1+E_2+E_3+E_4 とし,射影平面上の直線の引き戻しを H とする. (1) 直線束 O_X, L_0=O_X(E-2H), L_i=O_X(E_i-H) (i=1,2,3,4), 直線束 O_X(E_i+E_j-H); (2) 階数 2 の直規約ベクトル束 G ((2,5)-Grassmann 上の普遍商束の引き戻しの双対束), および,G_i(= G と L_i のテンソル積); (3) 階数3 の直既約ベクトル束 B (報告済み), 階数 3 の自己双対直既約ベクトル束 F_{1,1,1/2} (奇標数の場合のみ); (4) 階数 4 の自己双対ベクトル束 F' (標数 2 の場合のみ); (5) 階数 7 のベクトル束 E. 以上から,標数が 2, 3 の5 次del Pezzo曲面 X の反標準環は 有限F表現型(FFRT)をもつことが示された.この問題は,標数 5 以上では未解決であるが,一般の標数でもFFRT性が成り立つことが期待される.
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