研究実績の概要 |
本研究課題の中心的な興味の対象の一つは,正標数の可換環に関する有限F-表現型(FFRT性)とよばれる性質である.本課題ではこの FFRT 性を,正標数の代数多様体上のフロベニウス射の直像を調べることにより,代数幾何学的な視点から考察している. 本年度は,5次 del Pezzo 曲面 X の反標準環の有限F-表現型(FFRT性)に関して,標数 p=2,3 の場合に得られていた,反標準束 L=-K_X の n重テンソル積のフロベニウス直像 F^e_*(L^n) の直既約ベクトル束への直和分解に関する結果を,一般の標数 p>0 に拡張することを試みたが,標数 p=2,3 で用いた方法(非特異な 5次 del Pezzo 曲面が,射影平面上の一般の位置にある 5点を爆発して得られることを用いる)では達成できなかった.代替手段として,5次 del Pezzo 曲面が,5本の射影直線の直積多様体に対角作用する特殊線型群 SL(2) による GIT 商 P_1^5 としての構造をもつこと(Dolgachev-Ortland による)を用いる方法の有効性について検討を開始した. また,2次元正規次数環の FFRT 性に関する大川領氏との共著論文の掲載決定(Advances in Mathematics vol. 370 (2020), 107215, 37 pages)に伴い,同論文の査読コメントに対応して最終修正を行った.
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