研究課題/領域番号 |
16K05096
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小野田 信春 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (40169347)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / インド / アフィン代数幾何学 / 可換環論 |
研究実績の概要 |
今年度は研究目的に掲げた課題の一つである「2次元正則局所環 R 上の A2-fibration の構造を調べよ」を取り上げ、この問題を中心に研究を進めた。そのために、R 上2変数多項式環の R-自己同型全体のなす群の構造を決定することについて考察し、部分的な結果はいくつか得たが、完全な解明には至らなかった。研究内容は次年度に引き継ぎ、一定の成果を収めた上で、A2-fibration の構造決定を完成させる予定である。 この研究に関連して、以前からの継続として、2次元正則局所環 R 上の環 A について、A が R 上有限生成となるための条件を求める問題について考察した。その結果、過去の成果を補足する次の定理を証明することができた。 定理 (R,m) は剰余体 k の代数閉包が k 上有限次元であるような 2次元完備ネーター局所整域とし、D は R を含む整域とする。極大イデアル m の非零元 t が存在して、D/tD はネーター整域であり、D は t-進位相について分離的で、さらに、tD∩R=tR であるとする。このとき、次が成り立つ。(1) D/tD が R/tR 上代数的かつ mD≠D ならば、D は R-加群として有限生成である。(2) D が R 上超越的なら、D/tD は R/tR 上超越的であるか、または mD=D である。(3) D/tD が R/tR 上代数的かつ mD=D ならば、D/tD は体である。さらに、D[1/t] がネーター環なら、D もネーター環である。 以上が新たに得られた定理であるが、この定理で「R は完備である」という仮定は外すことはできない。R は完備である、という仮定を外した場合、定理が成り立たないことを示す具体例を実際に構成することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究課題の一つである「2次元正則局所環 R 上の A2-fibration の構造を調べよ」を中心に研究し、完全な解決には至らなかったがある程度の進展は見た。この問題は当初から手強いことは予想しており、今年度の進み具合は想定内である。ただ予想以上に難しい面があることも分かり、次年度以降は別の観点からの考察も必要になると感じている。ただ、関連して考察した2次元正則局所環上の環の有限生成性問題に関しては、これまでの一連の成果を補足するものではあるが、新たな定理を示すことができた。さらに、その定理に関連して、定理の仮定が満たされないときは結論が成立しないことを示す具体例も構成することができた。これらは予期していなかったことであり、望外の成果と言える。また、並行して、群環に関する研究も継続しており、これについても部分的ではあるが、多少の成果を得た。 現在までの状況は以上の通りであるが、新たな研究課題に着手し、その初年度であることを考えると、全体的におおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
正則局所環 R 上の An-fibration の構造解明に向けて研究を継続させる。具体的には、「A が2次元正則局所環 R 上の A2-fibration ならば、A は R 上の2変数多項式環であるか」という問題について、その解決を図る。その後、「A が離散付値環 R 上の An-fibration ならば、A は R 上のn変数多項式環であるか」という問題に取り組む。この研究に関連して、かねてから課題としてきた次の問題も並行して考察する。 問題 体 K の付値環(V,P) と K 上の代数関数体 L の付値環(W,Q)で、W の K への制限が V であるものについて、k=V/P とするとき、剰余体 W/Q の k 上の代数関数体としての構造を明らかにせよ。 この問題については、部分的な結果は得ているが、これまでの研究成果を踏まえ、それを一般化させることについて考える。 以上の研究に加え、次年度の後半からは、研究目的の課題の一つに掲げた「全射問題」、すなわち、「ネーター整域 R 上の n 変数多項式環 A の要素 g について、A/gA が R 上 n-1変数多項式環ならば、A は R[g] 上の n-1変数多項式環であるか」という問題について取り組みを始める。2次元正則局所環上の A2-fibration の構造決定問題と、基礎環が離散付値環で3変数の場合の全射問題とは密接に関係するので、両者を関連付けながら、過去の研究成果も参照して解決を目指す。 これらの研究を遂行するには、海外共同研究者のもとに出張して共同研究を行う必要がある。来年度以降も連絡を密にして、海外共同研究者との連携強化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究には海外共同研究者が3名いて、海外共同研究者のもとに出張して研究を行う計画を立てていたが、年度内には双方の都合の合う日程が見つからず、予定していた海外出張ができなかった。また、購入を予定していたパーソナルコンピューターについて、現在使用中のものがまだ使えたので、予定を変えて来年度に購入することにした。以上の理由から次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度計画していた海外共同研究者のもとへの出張を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てる。さらに、購入を予定していて取りやめたパーソナルコンピューターを来年度購入することにし、その経費にも充てる。その他にも、国内の主要な研究集会にに出席するとともに、アフィン代数幾何学の専門家を招いて専門的知識の提供を受ける。未使用額の使用計画は以上の通りである。
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