研究課題/領域番号 |
16K05097
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
毛利 出 静岡大学, 理学部, 教授 (50436903)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環論 / 非可換代数幾何学 / 量子射影空間 / 量子線織曲面 |
研究実績の概要 |
非可換代数幾何学という研究分野は1990年代に始まった大変新しい数学の分野で、現在欧米を中心に活発に研究されています。代数幾何学における重要な研究課題のひとつは低次元代数多様体を分類することです。同様に非可換代数幾何学においても低次元非可換代数多様体を分類することが最重要課題となっています。実際非可換代数幾何学は量子射影平面を分類したことに始まったといってよいでしょう。その後非可換射影曲線は分類が完成されましたので、次なる目標は高次元量子射影空間や非可換射影曲面を分類することであり、私はそれらの分類問題を主要な研究目標としています。
平成29年度の主な研究成果は次の通りです。1.量子射影平面の座標環である3次元quadratic AS-regular代数は、代数多様体とそれ上の自己同型との組とに1対1に対応することがArtin-Tate-Van den Berghによって知られています。その幾何的組を分類することを通して3次元quadratic AS-regular代数の関係式を同型を除いて全て求め、またその関係式を分類するという研究課題を長年指導学生達と取り組んでおります。平成29年度は特に対応する代数多様体が射影平面内の既約3次曲線の場合に分類を完成することができました。2.代数幾何学において射影空間は最も基本的な代数多様体であり、その特徴づけは大変重要な研究課題です。平成29年度は弘前大学の上山健太氏との共同研究で量子射影空間の完全な圏論的特徴づけを与えることに成功しました。この研究成果は6月に英国のエジンバラ大学で開催された研究集会“Linking Noncommutative Rings and Algebraic Geometry”で招待講演をする機会が与えられるなど、国際的にも高い評価を得ることができました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は弘前大学の上山健太氏との共同研究で3次元cubic AS-regular代数をpotentialを用いて完全に分類することに成功しました。平成29年度は上山健太氏との共同研究で量子射影空間の完全な圏論的特徴づけを与えることに成功しました。また本科研費を使用して海外から11名の講演者を招聘してRIMS研究集会「非可換代数幾何学とその周辺」を主催し、そこでこれまでに得られた研究成果を発表するとともに、本研究課題推進のための多くの情報を収集することができました。以上のことよりおおむね順調に進展していると言えます。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は次のような研究課題に取り組む予定です。1.量子線織曲面はAS-regular Z代数と呼ばれるものを用いて定義されていることなどから、Z代数を研究することは重要です。上記2.の研究課題の継続として、量子射影空間の圏論的特徴づけをZ代数に拡張する研究をアメリカ西ワシントン大学のNyman氏と始めています。2.代数幾何学において射影空間の次に基本的な代数多様体は射影超曲面ですが、非可換射影超曲面に応用することを目的として、弘前大学の上山健太氏との共同研究で非可換行列分解という概念を定義し、その基本的性質を調べています。3.東京大学の植田一石氏と大阪大学の大川新之介氏との共同研究で、射影直線上の量子線織曲面として定義される非可換Hirzebruch曲面のモジュライ空間の研究を継続する予定です。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は上記1.のNyman氏との共同研究「量子射影空間の圏論的特徴づけのZ代数への拡張」を最優先課題としており、その研究打合せのためアメリカ西ワシントン大学を一定期間訪問する計画を立てています。また平成30年度は9月に開催予定の「第51回環論および表現論シンポジウム」のプログラム責任者としてその運営に携わることになりました。幸い平成29年度本科研費を使用して開催したRIMS研究集会「非可換代数幾何学とその周辺」の開催費用を当初の見積もりよりも低く抑えることができたので、その分を平成30年度に繰り越して上記海外研究打合せ旅費(約50万円)と上記研究集会開催費用(約60万円)に充てる予定です。
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