私はこれまで特に非可換射影空間の斉次座標環であるAS-regular代数のホモロジー代数的性質の研究と分類問題、また非可換射影曲面の重要な研究対象である非可換線織曲面の幾何学的性質の研究と分類問題とを主要な研究目標としてきました。令和元年度の主な研究成果は次の通りです。 1.指導学生の研究成果として非可換代数幾何学創設当初の目標の一つである3次元2次AS-regular代数の完全な分類を完成させることができましたが、それらの研究成果を論文3本にまとめて学術誌に投稿し、そのうちすでに論文2本の学術誌掲載が確定しています。 2.代数幾何学において射影空間の次に基本的な多様体は射影超曲面ですが、非可換射影超曲面に応用することを目的として、弘前大学の上山健太氏と共同研究を行い、非可換行列分解という概念を定義し、可換超曲面の表現論で重要な役割を果たすKnorrerの周期性定理を非可換超曲面に拡張することに成功しました。また次元が低い場合の極大Cohen-Macaulay表現の分類に成功し、これらの研究成果を論文にまとめて学術誌に投稿することができました。 3.非可換射影空間の圏論的特徴付けに関する弘前大学の上山健太氏との共著論文がJ. Noncommut. Geom.に掲載されることが確定しました。その研究の続きとして、11月にアメリカ西ワシントン大学を訪問し同大学のAdam Nyman氏と共同研究を行いました。その研究成果として、今まであまり研究されてこなかったAS-regular Z代数を正式に定義し、局所双対定理などその基本的な性質を証明し、論文にまとめて学術誌に投稿することができました。
|